そう前代未聞の事態に戸惑っていると、

「ん……でも、夢の方は……なんだろう、ただ弾かれたというか……追い出された? って感じ。それも、入口の前とか、序盤も序盤。あれ……なんだったんだろう」

 ロマンスドが疑問を口にした。すると今度はそれを聞いたエンヴィーが、

「どーゆー事なんだよ、姫さんには何で精神干渉も運命の強奪も効果が無いんだ……っ」

 頬に冷や汗を浮かべて忙しなく地団駄を踏む。まさか精神干渉も無理なんて……本当にアミィは何者なんだ?
 親指の爪を噛んで考える。今回の検証は失敗に終わった。そして恐らく、この手の検証はこれからも全て失敗に終わる事だろう。
 ああなんという事だ。ここに来て予想外の事実が判明するなんて! 本人が望むなら、もしもの時はアミィから死そのものを奪ってしまおうと──アミィを不死身にしてしまおうなんてこっそり画策していたのに。これでは不可能じゃないか!
 突然ちょっとした計画が破綻する事となってボクまでもが地団駄を踏みそうになる。それだけ内心ではかなり焦っているのだ。

「すまない、マイ・ロード……期待に添えなくて」
「ごめんなさいあるじさま」

 猫越しではあるが、ルーディとロマンスドはどうやらボクが相当焦っているのだと察したようで、申し訳無さそうに眉尻を下げていた。

「……いや、お前達は悪くない。これはアミィの事を見誤ったボクに非がある」

 お前達はもう精霊界に戻っていい、急に呼び出して悪かったな。と付け加えてボクはまた扉を開いた。
 ルーディとロマンスドはどこか後ろ髪を引かれる様子でゆっくりと精霊界に戻ってゆく。二体が通った事で扉は塞がれ消滅した。
 そしてボクは自室にて椅子に全身を預け、はぁああああ……と大きなため息を吐く。アミィへの精神干渉が不可能な事に関して、何が理由で何が原因なのかを突き止める必要がありそうだからだ。
 思い当たる事としては……初めて会ったあの日、アミィが記憶喪失に陥っていたと言う事ぐらいか? ボクがフォーロイトの名前を出した事を切っ掛けに色々と思い出したと言っていたあの時。
 アミィはめんどくさい家系に生まれた奇想天外な発想と確かな才能を持つ努力家だが、それ以外は至って普通の女の子だ。何もおかしい所なんて……無い、筈だ。
 妙に達観してるというか、子供らしくない素振りが多いものの、それでもやはり子供だなと感じるような場面も多々ある。
 そんな、精霊や竜の権能を無効化出来るだけの力や何かがアミィにあるなんて…………想像もつかない。

「「はぁぁぁぁぁ……」」

 ボクがもう一度ため息を吐き出したのとほぼ同時。エンヴィーもまた、椅子にどっかりと腰を下ろして項垂れていた。
 そんなボク達の様子を見てついにナトラまでもが呆れたようなため息をつく。

「はぁ、結局何がしたかったんじゃお前達は……」
「悪かったな何も出来なくて」

 ナトラの理解出来んと言いたげな呆れの視線がこちらに向けられ、ボクはちょっとした苛立ちと恥ずかしさから悪態をついた。
 結局、この検証は失敗。それどころか新たな問題を増やすだけに終わってしまったのであった。