「はい姫さん、これで合ってますかい?」
「師匠〜〜〜っ! ありがとう、マジ神!!」

 師匠に頼んで取ってきて貰う──つまりお使い作戦デェス!
 二十八日の夜、師匠がお使いから戻って来て、街に初めて出た日に買ったハンカチーフとティーカップと茶葉が入ったお洒落な木箱を手渡してくれた。
 お陰様でマクベスタに無事にプレゼントを渡せそうだと安堵していると、師匠が苦笑いを浮かべて。

「褒めてるってのは分かるんすけど……俺達精霊に向けて神って言うのは控えめに言って喧嘩売ってるようなものなんで、これからは気をつけて貰えたら助かりますわ」
「え。神って言っちゃ駄目なの……?」
「精霊の嫌いなものは一に神、二に魔族、三に妖精って感じですからね。精霊の中でもシルフさんとかは特に神々が嫌いなんでね、絶対あのヒトには神って言わないよーに」
「はぁい……師匠、不快な気持ちにさせてごめんなさい」

 まさかの事実に謝ると、師匠は「知らなかったんだから仕方ないっすよ、これから気をつけて貰えればそれで」とはにかみながら私の頭を撫でた。
 しかし、精霊さんって言えば神の使徒でしょう? それなのに神々が嫌いって……きっと私には理解しきれないような理由と背景があるんだろうな。
 ちょっと待って…………神の使徒って前にも師匠に言ったわよね、私。確かミカリアへの手紙を師匠に頼んだ時に──

『あの結界は対人・対魔の効果しかないから、神の使徒たる精霊の師匠にはなんの影響も無いかと』

 ──ってめちゃくちゃ言ったわよね? しかもその後で師匠、『神の使徒ってのはちょっと不本意だが』って全然普通に言ってたわよね!? なぁんで気づかなかったんだ私!
 やばいどうしようこれまででシルフにも神って言葉使ってたらどうしよう……!!