そして食事を終え、マクベスタに城を案内してもらってると修練場なる場所に到着した。帝国に来る前のマクベスタがよく剣の特訓を行っていたのだそう。
 こういう広い場所を見ると、剣を振りたいと心がうずいてしまう。そうやってソワソワしていると、どうやら師匠にそれが見抜かれてしまったようで。

「姫さん、あの剣に名前とかつけてないんすか?」

 後ろからこちらを覗き込むように腰を曲げ、師匠がそう聞いてくる。つけてないよと首肯すると、師匠は「じゃあアレを思い浮かべながらつけてやってください」と微笑んだ。
 名前を付けるのはいいんだけど、でもどうして急に? と不思議に首を傾げつつ愛剣の名前を考える。
 今も部屋に立てかけられている我が白銀の長剣《ロングソード》。師匠からあの剣を頂いてからというもの、ほぼ毎日触れている愛剣。
 そういえば、どうして私はあの剣に名前を付けてこなかったのだろう。散々魔法にカッコイイ名前を付けてきたのに、何故あの剣にだけ……。
 うーん、白銀の剣だから白銀《しろがね》とか? いや流石に安直すぎるか。
 精霊さんに貰った剣だから精霊剣《エレメンタルソード》とか…………いや結局安直だし何よりダセェな……。
 いい案が思いつかず苦悩する。そんな時、私はある事を思い出しハッとした。
 そう言えば、ゲームでフリードルが使っていた剣の名前……確か『極夜《きょくや》』だったよね。黒い刃の魔剣、極夜──その黒い刀身とフリードルの薄明時の如き青の瞳から名付けられたもの(公式ファンブック参照)。
 何かと月やら夜空やらと夜に例えられる事の多いフォーロイトの容姿に相応しい名の剣。
 それを思い出した私は、一つの名を脳裏に思い浮かべていた。

「──白夜《びゃくや》」

 極夜の対に位置する言葉。フリードルと敵対するつもりでいる私の愛剣につけるにはぴったりの言葉。
 きっと、白銀の長剣《ロングソード》にも合うことだろう。
 そう愛剣を思い浮かべながら名付けると。突然目の前に愛剣白夜が出現した。
 チカチカと星が瞬くような輝きを纏いつつ、白夜は慌てて出した私の両手にすっぽり収まる。慣れ親しんだ重さに私は混乱する。

「えっ、えぇえ!?」
「ちゃんと来たみたいっすね、良かった良かった」
「あの師匠? これどういう事か説明してもらっても?!」

 白夜を手に師匠に詰め寄る。師匠は白夜を指さして、

「それ、人間界で言う所の魔剣なんすよ。作られたのは精霊界ですけどね。名付けをすると所有者との魔力の繋がりみたいなモンが出来るんで、姫さんが名を呼ぶだけで姫さんの手元に召喚されるんですよ、その剣は」