ご一緒にどうですかとミカリアも誘い、マクベスタ案内のもと通された食堂にて私達は大きなテーブルに座り食事する。……ちなみに一応探してみたけどシュヴァルツは見当たらなかった。一体どこにいるんだろうか。
 テーブルマナーなんて知らないとぼやくディオとシャルにはイリオーデが逐一教えてあげているし、ナトラは私が隣に座っているからもしもの時は手伝える。
 その他の人達は全員礼儀作法がきちんとしているので、なんら問題なく食事は進んだ。

「ぐぬぬ……どうやって食えばいいのじゃ。何故手掴みで食ってはならんのだ…………」

 そんな中、握りしめたフォークを更に突き刺すように皿へと落とし、カンッという音と共にナトラが唸る。そのフォークの近くをトマトがコロコロと転がっていて、トマトを食べたいのに上手く刺せなかったらしい事が分かった。
 このままだとナトラの中で小さな苛立ちが積み重なりやがて爆発してしまいそうだ。それはまずいと思った私は、

「はい、これで食べられるでしょう?」

 ナトラのフォークを借りてあーん、とトマトを差し出す。するとナトラは大きく口を開けてぱくりとトマトを食べた。
 ほくほくとした顔でトマトを咀嚼するナトラを眺めていると。

「う、羨ましい……っ」
「お嬢さんもやってもらえばいいじゃん」
「わたしなんかが頼める訳がないでしょう! アミレス様に手ずから食べさせて欲しいだなんて……!!」
「姫さんはお嬢さんの事気に入ってるから快諾すると思うけど」
「違うのです、わたしの心がもたないのです。今日だけでもアミレス様と入浴とご一緒する奇跡にあずかれたと言うのに、そんな事までされてしまっては幸せ過ぎて馬鹿になってしまいますわ!」
「はぁ、そう? 予想以上にめんどくせぇなァお嬢さん」
「悪かったですね面倒くさくて」

 メイシアと師匠が仲良さそうに小声で会話をしている。火の魔力のメイシアと火の精霊の師匠だからきっと相性もいいんだろう。
 それはともかく、私はメイシアの方を向いて彼女に尋ねる。

「メイシアもあーんってして欲しいの?」
「えっ?! ぃいやっ、嫌ではないのですが、その、いいのですか……?」
「えぇ勿論よ」

 ぱぁあああああっと明るくなるメイシアの顔。宣言通りあーんしてあげると、メイシアはまさに夢心地といった表情で蕩けていた。
 そうやって和気藹々と食事をしていると、ふと膝の上に一匹の猫が乗ってきた。それを抱き上げて私はおはようと声をかける。

「おはようアミィ。暫く傍にいられなくてごめんね」
「お仕事だったんだよね、仕方ないよ…………あっ、そうだ。皆にシルフの事紹介してもいい?」
「別に構わないよ」

 シルフからの許可も降りた事だし、私は改めて皆にシルフの事を紹介した。
 猫の姿をした精霊さんであり、六年前に出会って以来私に色々な事を教えてくれた先生なのだと紹介した。
 既に面識のあるマクベスタやメイシアならともかく全員あまり驚いた様子では無かったのが少々意外だった。