「…………マクベスタは話の分かる友人であり、共に剣を学ぶ同士だと思っております。なので恋愛感情がどうこうと言われても──無い、としか。そもそも私には誰かと恋をする資格も権利もありません。ですので……私が彼の友人以上の立場になる事はないでしょう」

 言葉を選べず申し訳ございません。と王妃の翠色の瞳に告げる。
 マクベスタの過去に起きる筈だった悲劇は何とか阻止出来た。マクベスタは心に膿を抱えていない状態でミシェルちゃんと出会う事になるだろう。
 この世界のミシェルちゃんが誰の手を取るのか、未だによく分からないが──……誰の手を取ろうが私のやる事はただ一つ、生き延びる事。

 しかし、個人的には皆がハッピーエンドを迎えられたらいいなと思っているので、それぞれのやりたい事や叶えたい事があるのなら全力で応援するし手伝うつもりでいる。
 だからもし、マクベスタが近い将来ミシェルちゃんと出会い恋に落ちたとしたら。その時はミシェルちゃんが誰のルートを進んでいようが、無理やりにでもマクベスタとのイベントを発生させて恋のキューピットになってやろう。

 愛を知らず死ぬか生きるかしかないアミレスに恋をする余裕なんてある筈がない。だからゲームのアミレスは恋愛のれの字も無いまま死を迎えた。
 アミレスとしての基盤は私にも勿論受け継がれている。だからこそ、『私』も愛とか恋とかは分からない。
 脇役で悪役のアミレスにはそんなキラキラしたものは似合わない、という公式さんの判断なのだろう。
 そもそも乙女ゲームの世界にいるのに誰からも愛されてなかった時点で、アミレスには最初から恋愛と言う土俵に上がる事すら許されなかったようなもの。
 だからこそ──私には、恋をする資格も権利も無いのだ。

「アミレス王女…………突然すみません、このような事を聞いてしまい。これは私の過ちですわ……なのでどうか、マクベスタの事は嫌いにならないでやってください」

 あの子にとっては、貴女はかけがえの無い存在のようなのです。と言って、王妃はもう一度頭を下げた。
 しかしハッとしたようにこちらを見て、

「実はもう既にマクベスタが嫌いだとか……?」

 不安げに王妃は呟いた。そんな事は無いですよと伝えると、王妃はほっと胸を撫で下ろしていた。
 彼女は本当にマクベスタの事を愛しているんだろうなぁ……だからこそ息子の事にここまで真剣になれるんだ。