晴天の下、剣が風を斬る音が聞こえてくる。失敗に対して厳しい叱責が聞こえてくる。
 よく晴れた、なんて事ない昼下がりだ。
 体の中を魔力が巡るのを感じる。手のひらに魔力を集め、それを魔法という形で具現化する。私の手には水で出来た弓が握られ、限界まで矢が引かれている。

「穿て! 水圧砲(ウォーターアロウ)!!」

 前方の巨大な岩目掛けて矢が放たれる。それは異常なまでの水圧と加速をもって岩を穿つ。
 この六年で学び応用をきかせた魔法、それが水圧砲(ウォーターアロウ)だ。……ネーミングセンスの無さには突っ込まないで欲しい。これでも一番マシな案を選んだんだ。
 汗をよく吸う白いシャツにズボン姿。邪魔になるからとまとめられた銀色のポニーテール。おおよそ一国の王女らしくはない装いで、私は更に「よしっ」とガッツポーズをする。

「この岩も貫けるとなると、普通の家屋や騎士の鎧ぐらいなら多分撃ち抜けるんじゃないかなぁ。流石はボクの教え子だ」
「ふふっ、シルフ先生の教え方が凄く上手だからだよ」

 猫シルフがぺしぺしと私が壊した岩を触り、消滅させながら声を弾ませる。魔法の特訓が座学から実技に移った頃合から、シルフはいつもああやって簡単な的や敵を作って実践形式で教鞭を執ってくれている。
 それが六年も続けば……私とて多少は成長する訳でして。昔は魔法に憧れるだけの子供だった私が、今や魔導師の末端に名を連ねても怒られないぐらいには成長出来たと思う。
 ──そう、アミレスになった時からはや六年が経過した。私も今や十二歳となり、剣に魔法に勉学に作法にと多方面でそこそこ優秀な成績を収めている。
 六年間私はシルフから魔法を学び、シルフが連れて来てくれた赤髪の火の精霊のエンヴィーさんに剣と体術を習い、ハイラさんから礼儀作法に勉学を教わった。……ハイラさんはそれはもうはちゃめちゃに優秀な人で、本来侍女が持つはずのない技術や知識を沢山お持ちでいらした。
 そうやって、とにかく努力ばかりの日々を重ねた私は……十二歳の少女にしては背が高く、手足もしっかりとしていて、怖いもの知らずと皇宮の侍女達に恐れられる事となった。
 それもその筈。だって私、露骨にフリードルを避けているんだもの。
 本当にどうしても関わらないといけない時は貼り付けた笑顔で何とかやり過ごしているけれど、それ以外であの男に関わるなんて面倒だ。だから逃げ回っている。
 そしてなんと、この六年のうちに私には新たな友達も出来たのだ。