「王女殿下の無事のご帰還を今か今かと待ち侘びておりました。王女殿下がいらっしゃらない数日間、私は改めて己の騎士としての在り方を見つめ直し我が身の不甲斐なさそして愚かさを痛感した所存でございます。何はともあれ王女殿下がこうしてご無事に凱旋された事が私にとっては何よりの喜びです!」
「殿下、怪我とかは無いのか? 体調は? そもそも何で俺達に何も言わなかった? どうしてアンタはいつもいつも大人を頼ろうとしないんだ?」
「聞いてくれ王女様、俺はここ数日間で新たな魔法の使い方を学んだんだ。それに沢山の人を治療した、王女様にがっかりされたくなくて頑張った。だから沢山褒めて欲しい」

 まるで嵐のように吹き荒れるイリオーデとディオとシャルの言葉。周りの喧騒も相まって何も聞こえない。
 とにかく三人の剣幕が凄い……いやシャルは何だかいつも通りなんだけど、とにかく勢いが凄い。
 とりあえず一人ずつ順に喋ってくれ、と言おうとしたその時。私の肩を掴むディオの手首をメイシアが義手で掴み、

「わたしのアミレス様に触れないでくださいませんか、力の加減も知らぬ無骨な男性が……アミレス様が怪我をされたらどうされるおつもりですの?」

 と眉を吊り上げて威嚇した。するとディオは、「悪い、殿下。痛くなかったか……?」と言って慌てて手を離した。

「特に痛くなかったしメイシアは心配しすぎよ。私はそんなにヤワじゃないわ」
「でも心配で……わたしはもう、目の前で貴女が怪我をする所を見たくなくて」
「メイシア……!」
「なのでもう危険な事は……」
「……それは約束出来ないわね」

 健気に私の事を心配してくれるメイシアの言葉に、私はじーんとしてしまった。
 その際、サラッとメイシアが私に口約束をさせようとしたが、私はすんでのところでそれを回避。
 危なかった……メイシアが賢いばかりに引っかかる所だったわ。
 またその約束は出来ないと告げると、メイシアがリスのように頬を膨らまして「どうしてですか!」と可愛く私の体をポコポコ叩いて訴えかけてくる。
 貴女との約束を破りたくないからその約束だけは出来ない……なんて言ったら、メイシアは怒るだろうなぁ。それが分かってるから、私はずっと『約束は出来ない』の一点張りなのよね。

「人にどうこう言っておいて、自分もアミレスを叩いてるじゃないか、メイシア嬢」
「おかえりなさい、王女殿下。色々と話したい事があるんだけど……とりあえずは。お疲れ様」

 今度はマクベスタとリードさんが現れた。マクベスタの言葉にメイシアが「これは女の子同士の触れ合いです。マクベスタ王子には分からないでしょうけど」と反論する中、

「──どうもご機嫌麗しゅう、国教会の聖人様。まさかお目にかかれる日が来ようとは」
「──こちらこそ。大陸でも最西端に近いこの国でリンデア教の方にお会い出来るとは」

 リードさんとミカリアが不自然な程キラキラした笑顔で会話していた。
 というか、リンデア教と国教会ってめちゃくちゃ仲悪いんだった。でもこの人達意外に仲良くやってるよ? もしやこれが二つの宗教の和解の第一歩に……!!
 するとブレイドがマクベスタを見て「ブルルッ」と嘶いた。ああそうだ、ブレイドの事をちゃんと謝らないと。