「──アミレス、様?」

 物凄く賑やかなこの場においても特に聞こえやすい、鈴を転がすような声。ふと後ろを振り向くと、そこには──今にも泣き出しそうな顔のメイシアがいた。
 メイシアは手に持っていた紙の束をその場に落とし、そしてこちらに向かって走り出した。

「アミレス様ぁっ!!」

 涙を浮かべながらメイシアは抱き着いて来た。
 繋いだ手も握っていた手も離し、私はメイシアを抱き締めた。

「わたっ、わたし……! すごく、心配、して……っ! アミレス様がまた無理して、怪我したらどうしようって…………死んじゃったら、どうしようって……!! 本当に、ほんとうに……しんぱいして……っ!!」

 メイシアが耳元で泣きじゃくる。その声も体も少し震えていた。
 彼女の背中をゆっくり擦りながら、

「ごめんねメイシア、心配かけちゃって」

 と告げる。するとメイシアがぎゅっと抱き締めて来て、

「もうこんな危険な事はしないでください……!」

 ぐすっ……と鼻をすすりながら言って来た。メイシアの可愛いお願いだから聞いてあげたいのだけど、いかんせん時と場合と必要によっては危険な事もやるつもりだから……確約は出来ない。
 その為「善処します……」と答えた所、メイシアは「善処じゃなくて約束してください!」と涙目でぷんぷん怒ってしまった。
 約束は出来ないなぁ……とメイシアの追及をのらりくらり躱す。
 その時であった。私めがけてまたもや人が走って来たのは。

「王女殿下!!」
「殿下が戻って来たって本当か?!」
「王女様!」

 女性達の群れを掻き分けて現れる見知ったイケメン達。彼等は私の姿を見るなり人にぶつかろうが邪魔になろうが全く気にもとめず、こちらまで全力疾走して来た。
 そしてメイシアと熱い抱擁を交わす私を一旦無理やり引き剥がし、膝を曲げて肩をがっしり掴む。そうしてからディオ達はそれぞれ捲し立てた。