「……そう言う事だったのですね。病にしては些か強過ぎるとは思っていたのです。そうか、呪いと来ましたか…………まさか姫君が此度の原因を一人で解決したなんて……」

 ミカリアはどこか寂しげに瞳を伏せた。その美しい顔を曇らせてしまった事を急に自覚し、私の心は締め付けられるようだった。
 それも束の間、ミカリアはナトラを見据え問いかけた。

「我の呪い、と貴女は仰ってましたね。貴女は一体──何なのですか?」
「……」
「……答えて貰えない感じですかね」

 ツーンとしながらミカリアの言葉をスルーするナトラ。その口はドライフルーツを咀嚼している。
 ミカリアはどうしようかなぁと苦笑いを浮かべている。

「……ナトラ、話してあげて?」
「我は偉大なる緑の竜じゃ。ひれ伏せ人間共」

 ミカリアの言葉を無視するのはまずいと思い口添えすると、ナトラはすんなり答えた。どうやら私の言う事は聞いてくれるらしい。
 明かされたナトラの正体にミカリアは一瞬驚き……はしたものの、むしろ納得したように「あぁ、成程……」と言って肩を竦めた。

「竜の呪い……それも純血なる竜の祖が一つの呪いともなればあの頑固さも頷けます。というか、あのレベルで本当に良かった。更に強力なものであれば、恐らく解呪に時間がかかっておりましたから」

 無作為に魔法を連発して治す事は出来なかったでしょう、とミカリアは乾いた笑いを浮かべながらドライフルーツをつまんだ。
 その時、ナトラにキッと睨まれ少し怯んだ様子でもあった。そんなミカリアに向け私は次の話題を振る。