その後、私達はそれぞれ仕事を割り振られ早速取り掛かる事となりました。私はたまたま目が合ってしまったからか、侍女長に王女殿下の私室の掃除を任されました。
 王女殿下の私室にお邪魔させていただき、私は目を疑いました。
 明らかに物が少ないのです。この国唯一の王女殿下であらせられるにも関わらず、王女殿下の部屋には物が少な過ぎるのです。
 皇宮……それも王子殿下や王女殿下へは必要経費として、氷金貨約五百枚分程の膨大な予算が毎年与えられている筈なのに、その予算とは明らかに不釣り合いな物の少なさでした。
 ……何故私がそんな事を知っているかと? 実家にいた頃、あの男の部屋の掃除を押し付けられた際にたまたまその資料を見ただけです。
 ただ王女殿下があまり物欲の無い方なだけかもしれません。ですので私は、不躾にも王女殿下に問いました。
 …………欲しい物があればどうなさるのですか、と。
 すると王女殿下はお答えくださりました。

「じじょちょうに言って、氷金貨二十枚分までなら用意してもらえます」

 この時、私は確信しました。この皇宮の侍女は──救いようの無い屑ばかりなのだと。
 まさか幼い王女殿下に与えられた予算を大幅に横領しているとは……この様子だと余罪はいくらでも見つけられそうですし、どうせ何処かに改竄した帳簿がある事でしょう。
 絶対にいつか見つけ出してあの屑共を掃き溜めに棄ててやりますわ…………こんなにも純粋で高潔な王女殿下を騙すなんて、恥知らずにも程がある。同じ人間として恥ずかしいです。今すぐ天へと送ってやりたい。

「お教えくださり誠にありがとうございます、王女殿下」

 私がそうやってお礼を告げると、王女殿下はきょとんとしていた。そして私の顔を見上げて、

「……はじめてです。そんなふうにおはなししてもらえたのは」

 四歳の少女らしく無邪気に笑った。