「……まぁ、とは言えども急いでるから手間はかけられないのよね」

 そう呟きながら、私は魔法を発動した。上空に青い魔法陣が現れ、そこからポタリポタリと雨が降り始める。それと同時に、狼達は私目掛けて襲いかかる。

「うーん、名前は……そうだなぁ──槍雨《やりさめ》でいっか」

 名前を考えていなかったその雨は、私が名をつけた瞬間に全てが氷へと変わり、氷柱の雨を降らす。高速で降り注ぐ氷柱達は槍のように狼へと容赦なく突き刺さり、当たり所が悪かった場合は死に至らしめた。
 この魔法は私の周りでだけ何も起きていない。発動する場所にもよるが、発動した私本人までもが濡れてしまうのが難点だな、これは。
 調整が面倒だしあまり威力にも期待出来ないなぁこれ。と考えていた所、何やら狼の中に生き残りがいたようで。
 虫の息でありながらも、吼えながら襲いかかってきたのだ。

「どうぞ安らかに」

 その首を綺麗に斬り、私は第三ラウンド狼戦を終えた。
 動物愛護の組織がいたならば確実に非難轟々な動物殺しっぷりである。
 いや、こんなにも治安悪いこの森が悪い。うむ。
 そうして向かってくる動物や魔物らしきものをちぎっては投げちぎっては投げ……私が通った道には、まるで大量虐殺でも起きたのかってぐらい大量の死体が転がっていた。
 なんて治安の悪い森なんだ、まったく! これでは人がびっくりしてしまうじゃない!
 そしてついに百年樹に辿り着く。それは想像していたよりも大きくて立派な樹だった。
 あの悪魔の話だとこの樹の根元から地下大洞窟に行けるらしいんだけど……そんな場所あるかしら。一周ぐるりと回ってみたが、それらしき入口は無い。
 あの悪魔もしかして適当言った? 今度会ったら顔面ぶん殴ってやろうかしら。

「……無いなら作るしかないわね」

 おもむろに剣を抜きながら、私は呟いた。動物の大量虐殺に続き森林破壊か。ハハ、犯罪者にも程があるぜ私。
 心の中で乾いた笑いを浮かべつつ、私は百年樹の根元目掛けて何度も剣を振るった。暫くそれを続けていると、一箇所だけそれらしき場所が現れたのだ。
 地面もついでで抉ってしまい、そこで謎の石が露出したのだ。