なのでカイルは顔と血筋以外秀でた所の無い不良物件と揶揄されている。なお、貧乏第四王子である理由は与えられた予算《おこづかい》の大半を魔導具開発に回しているからである。
 そんな貧乏王子が突然、危機に瀕するオセロマイト王国へ支援を行った理由はただ一つ──知っていた(・・・・・)から。

「あっ、そうだコーラル。オセロマイトの感染病の原因、分かったか?」

 カイルがくるりと振り向くと、コーラルはその期待に満ちた瞳を見て残念そうに首を横に振った。それにガッカリしたカイルはため息を吐きつつ項垂れる。

「くっそぉ……なんで原因何にも書いてなかったんだろうなぁ〜! 滅びたのならせめてその原因とかも考えとかん? ほんとそういうトコ変に雑だよな公式さんは〜〜!!」

 カイルが奇声を上げ始めると、コーラルは(またか…………)と慣れた反応で紅茶を入れ始めた。そしてそれをカイルに出す訳でもなく、自分で飲んだ。

(この発作が無ければ本当に完璧なのに……相変わらず発作の間はうるさいですね……)
「ちくしょうせめて原因が分かってりゃ! まー分かってた所で選択肢ミスった俺にはなぁんにも出来ないんですけどね!!」

 カイルが頭を抱えながら持病の発作を起こし絶叫を上げる中、横で優雅に紅茶を嗜むコーラル。
 もう、ここまで来ればわざわざ言うまでもない事だが……このカイル・ディ・ハミルと言う十四歳の少年は、何を隠そう──

「も〜〜〜! 何の為のゲーム知識なんだよぉおおっ、何で俺は軟禁されてんだぁあああああ!」

 ──前世の記憶を持つ、元アンディザプレイヤーの転生者なのである。