《ええと、まだ色々話したい事があるんだが……その、なんだ。頑張れ! 病なんかに負けるな! 現地に行って色々やれたらいいのに俺こんなんだし……ああえっと、とにかく応援してるから!! 絶対、こんな所で滅びないでくれ──》

 ブツッ。と自称カイルの声が途切れる。誰もが天を仰ぎ、開いた口が塞がらないまま呆然としていた。
 その瞬間、城内にいた者は誰も気づけなかったものの……実は城の上空に現れていた半透明の魔法陣がスゥッと消えていった。
 そんな中、マクベスタは魔法に明るいシュヴァルツとリードに問いかけた。

「…………今の、一体何だったんだ……?」
「…ぼくも知らないかなぁ」
「右に同じく……」

 しかしめぼしい答えは帰ってこなかった。それもそう、これは自称カイルの言う通り魔導具によるものなのだから。魔法とはまた違うものなのだ。
 アミレスが姿を消し、遠くの国より謎の声と謎の物資が届いた……朝早くより立て続けに起きた異常事態に、オセロマイト王国が王城は波乱に満ちるのであった……。


♢♢


「っあぶねぇ〜! 自慢のサベイランスちゃんが見つかる所だった……」
「ええ本当に……慌てて布を被せて騙せる馬鹿な巡回兵で良かった」

 軟禁されている部屋にて、カイルはドキドキと鼓動する心臓を押えながらしゃがみ込んでいた。
 そんなカイルの背中を優しく擦るコーラル。彼はカイルの世話の為に共に軟禁されているのである。
 そう、カイルは確かに軟禁されていた。その理由は──王位継承権の放棄。

 カイルが第四王子でありながら早々に後継者争いから離脱した事……そしてカイルが第一王子と同じ正妃を母に持つと言う理由から、継承順位二位にあった事が主な原因である。
 第一王子とカイルが正妃の息子であり、第二王子と第三王子が側妃の息子であった。もう一人側妃には娘がおり末の第一王女もいるのだが……それは今は省く。
 王太子であった第一王子が昏睡状態に陥った事で発生したこの棚からぼたもち状態。
 カイルは兄が昏睡状態に陥った為、継承順位が一位に繰り上がってしまったのだ。その事が原因で腹違いの兄達に日々喧嘩を売られていた。
 しかしカイルは王位になんて興味は無かった。だからこそいち早く継承権を放棄したのだが…………何を企んでいるのかと何故か国王やら兄王子達に疑われ、こうして軟禁されている。
 それによりカイルは行動を制限されていた。ならば、そんなカイルがオセロマイト王国にどうやって声を届け物資を送ったのか……。
 それはカイルが自作した魔導具によるものだった。