「おっはよ〜、いい朝だねぇ〜」

 相変わらずの笑顔でシュヴァルツは挨拶した。それにイリオーデは「あぁ」とだけ答え、ディオリストラスが「おはようさん」と軽く返事し、シャルルギルは「丸い雲…………はっ、いい朝だなシュヴァルツ」と慌てて返事をしていた。

「皆しておねぇちゃんの事待ってるのぉ?」

 じゃあぼくも一緒に待とーぅっと。と言いながらシュヴァルツは彼等の輪の中に自然に入っていった。
 そうしてイリオーデ、ディオリストラス、シャルルギル、シュヴァルツの四人で軽い話をしながら待機していた所……シュヴァルツがとある異変に気がついた。
 じっと扉の方を見つめたかと思えば、突然扉に近づき耳を立てたのである。その行動を勿論イリオーデとディオリストラスは咎めたのだが……それ所では無くなったのだ。

「ねぇ、何だか変じゃない? 部屋の中から全く人がいるって気配がしないよ?」

 真剣な面持ちのシュヴァルツが放った言葉が、イリオーデ達に緊張の糸を張り巡らせた。
 どうしたものかと話し合う四人。しかしもし万が一の場合……今ここで突入しなければ後悔する事になるやもしれない。
 だがそうでなければ……彼等は仕える王女殿下の寝室に堂々侵入した不届き者達となってしまう。
 彼等は今、かなり厳しい選択を迫られているのであった。

「……とにかく突っ込むぞ。そんで何も無ければ全員でしっかり怒られよう」

 ディオリストラスがそう提案すると、誰も反論を口にする事無く静かに頷いた。
 そして──。

「入るぞ殿下!!」

 意を決してディオリストラスが扉を開く。四人で雪崩込むように部屋に入ると……そこには人っ子一人いなかったのだ。
 寝台《ベッド》には人の温もりなど無く、この部屋にはここ数時間人がいた事を示す形跡が全く残ってなかった。
 いる筈の人はおらず、ある筈の物もいくつか無くなっている。
 それ即ち……数時間前より既に、この部屋からアミレス・ヘル・フォーロイトが姿を消していた事を意味する。

「──ッ!?」

 事の重大さを瞬時に理解し、四人の顔が青く染まる。