そこで僕は確信した。
 ──これ、絶対家まで無理にでも送らないとあの子は絶対更に無理するだろ。と……。
 出会って半日の僕にこれだけ心配かけるんだ、多分彼女の家族の心配はもはや天にも届く程だろう。
 なので否応なしに送り届ける事にしたのだが……何度目かも分からない事件が起きた。
 スミレちゃんも正体を隠していて、よりにもよってそれが現フォーロイト帝国唯一の王女だったのだ。衝撃を通り越して最早何も感じなかった。
 でも確かに……彼女にはあの桃色の髪よりも銀色の髪が良く似合う──言っておくけど、僕は別に変な意味では言ってないからね? ただ客観的に見てそう思っただけだよ。
 とにかくその日は城まで彼女(と身寄りのないシュヴァルツ君)を送り届けて自分もまた泊まっていた宿に戻った。
 寝台《ベッド》に倒れ込み、僕は真剣に後悔していた。何で宿の事教えちゃったかなぁ、本当に嫌な予感しかしないとも。ここ暫くずぅっと嫌な予感と同居してるよ。
 それから数日間、僕は結局嫌な予感を拭いきれないままのんびりとした日々を過ごしていた…………嵐が来たあの日までは。

 夜中に突然、ディオ達と彼女が訪ねてきた時はよっぽどの事が起きたのだろうとすぐに察した。なので僕はすぐさま準備を始めた。
 この時、煙草吸ってなくて本当に良かったと思った。ワイン飲んでただけで良かった。ワインならまだ言い逃れ出来る。まだ優等生な僕でいられる。
 この後まさか、色んな事がありすぎて数日でどっと心労が溜まるなど思いもしなかった。
 特にスミレちゃん──王女殿下がね……無防備過ぎるし無頓着だし色々と規格外だし。何故か保護者のような気分になってしまうよ。
 だからかなぁ……あの子に期待されると嬉しいし、応えたいなぁって思う。期待に満ちた目で見上げてくるのが弟と少し似てるからかな。
 どうしても、彼女の期待だけは裏切りたくないと。卑屈で出来損ないの僕は分不相応にも思ってしまうのだ──。