「他にも犬や鳥や鼠と言った家畜や動物が感染方法の場合もあるので、これからは何らかの感染者が出た際にはその感染経路を調べ尽くして下さい。伝染病の予防と対策はこれで……治療はもう大司教とかに頼むように。その方が確実です」

 一通り話し終えた所でふぅ。とため息をついて周りを見ると、何だか皆の視線が私に集中していた。中でもオセロマイト王とカリストロ王子のそれは畏敬に近いものだった。

「…………その若さでそれ程の知識をお持ちで……」

 カリストロ王子が視線を動かす事無く呟いた。
 するとそれに続くようにオセロマイト王が頷き、

「……あぁ……流石はフォーロイトの血筋……やはり天才なのか」

 と瞳をぎゅっと伏せた。いや私忍びじゃないです。
 更にはマクベスタまでもが父兄のノリに続き、

「何処でそのような知識を……」

 と驚嘆している。前世ですなんて言えない。
 前世の知識を活用したらこうなるのは分かっていた事だが…まさかここまでとはな……。
 とにかくこの空気を変えるべく、私はパンっと手を鳴らし、強引に話を進める。

「とにかく。以上の事を"可及的速やか"に国中に広めて下さい。健やかに生きたいのなら恥を捨てろと言いながら。しょうもないプライドで死にたいのであれば、それはもう個人の自由ですよとも言ってあげてください」

 可及的速やか(なるはや)にと強調し、私は自分史上最高レベルの営業スマイルを作った。
 その営業スマイルの圧に負けたのか、カリストロ王子が「ッはい!!」と突然立ち上がり走って部屋から出て行った。私達はその背中をただ静かに見つめる事しか出来なかった。
 その後マクベスタが「普段はああでは無いんだが……」とボソリと呟いたので、私は「事態が事態だから……」となんとかフォローした。果たして意味があったのかは分からないが。
 そして残されたオセロマイト王が慌ただしくて済まないと謝ってきたのでそれに大丈夫ですと返し、私達は更なる話に踏み込んだ。

 それはどうやって草死病《そうしびょう》を治し、根絶するかというもの。
 私だけは根絶法を把握しているものの、治し方はまだ定まらない。とにかくリードさんとシャルに当たって砕けろ作戦をしてもらうしかない。