とまぁ、ここまで長々と話してきた訳ですが。
 私はフリードル殿下の話を聞いてまず最初に、皇宮の彼女の部屋へと向かいました。すると偶然にも彼女の専属侍女……確かハイラさんでしたか。彼女と出会い、焦る彼女にその理由を聞きました。
 何でも、今、彼女はまた高熱に苦しんでいるのだとか。
 昼間フリードル殿下が見た彼女は元気な様子だったらしいのですが……一体どういう事なのでしょうか。私が今朝侍女に渡した薬が一時的に効いて、夜になりその効果が切れたとかでしょうか。
 ……自分で言っておいてあれですが、かなり非現実的ですね。そんな中途半端な効能でしたら、よく効く薬として噂になったりもしないでしょう。
 では、何故か。それを考え究明するのが私の仕事です。最も手っ取り早いのは彼女を視る事なのですが、今は眠っているそうですからそれは不可能です。また日を改める事にしましょう。
 皇帝陛下より少なからず利用価値があると判断されている事から、彼女はまだしばらくは処分される事もないでしょうし、皇帝陛下にとって邪魔な存在にならない限り私も手を出すつもりはありません。
 ですが……どうしてでしょうか、彼女は近い将来に皇帝陛下の障害となる予感がするのです。皇帝陛下の忠臣としては今のうちに処分した方が良いかと思うのですが、ケイリオルという人間としてはもう少し彼女を監視してその謎や変異を解き明かしたいと思うのです。

 こう見えて、私、推理小説等が好きでして。良いですよね……一見して不可能な殺人や事件の数々。それを限られた情報から予測し論理立てて犯人を見つけ出す。
 胸が踊りますねぇ。過去にそう言った推理小説の探偵の真似事をした事は何度かあるのですが……残念ながら、私からすれば全ての人間は情報を得る為の道具に過ぎず、相手を視ただけで全てが分かってしまうので推理をする必要も無かったのです。
 なので今、私はとても嬉しいのです。最低でも一晩……彼女の変異について推理を巡らせる事が出来るのですから!
 それも私の力及ばず一晩で究明出来なかった場合はそれ以上も可能なのです。数日間、数週間、数ヶ月間、数年間………一体どれだけの間、私は解けない謎に挑み続けられるのでしょうか。
 あぁ、ですから…彼女が皇帝陛下に不要だと思われ処分されない事を祈るばかりです。
 皇帝陛下が私に彼女を処分せよと命じられたのならば、勿論私は彼女を処分します。私の感情や趣味よりも皇帝陛下の御言葉の方が重要ですから。
 なのでこれはちょっとした、ささやかな願いです。叶おうが叶わなかろうがどちらもでもいい希望に過ぎません。

 どうか、貴女の存在価値を示してください。
 そうして……皇帝陛下に必要だと、思わせてみせてください。さすればきっと、貴女は処分されず、生きていく事が出来るでしょうから。
 突然の変異を見せた貴女にならきっと可能でしょう、存在価値を示す事ぐらい。
 ……私も、陰ながら応援していますよ。アミレス殿下。

 おっと、この名は呼ぶなと皇帝陛下に命じられているのでした。ふふふ、久々に年甲斐も無くはしゃいでしまっているからでしょうか。
 それでは私はこの辺りで。調査すべき事や仕事が残っておりますので……。
 あぁ、これからが楽しみで仕方ありませんね!