「……なぁ殿下、俺の首繋がってっか?」
「え、何よ藪から棒に。鏡替わりに水出してあげようか?」

 その突飛な言葉に戸惑いつつ空中に水を出す。するとディオの顔が随分とぎこちない動きで水の方を向き、彼は首と頭が繋がっている事に安堵したようだった。
 しかし急に何故。と思っていた時、今度はシャルが大きく息を吐いて言った。

「……王女様は凄い。よくこの状況であれ程堂々と振る舞えるな……俺なんて頭が真っ青だ」
「それを言うなら真っ白では……?」

 シャルの少し間違った言葉にすかさずリードさんが真顔で訂正を入れる。
 そして何やらシャルの言葉にディオが共感し頷いている。その理由はよく分からないが、とりあえず私はシャルに向けて最強の殺し文句を言い放つ。

「だって私、フォーロイトよ?」

 極悪非道、冷酷無比、傲岸不遜、傍若無人、慇懃無礼、絶対王者。以上の言葉達を欲しいままにする我が氷の血筋が堂々と振る舞えない筈がなかったのよ。
 つまりこれは、氷の血筋(フォーロイト)を知る者なら誰もが納得せざるを得ない最強の殺し文句なのだ。
 これから積極的に使っていこう。大丈夫、こんな態度でもきっと許されるよ。
 だって……我、フォーロイトぞ??
 アミレスにもこれぐらいの面の皮の厚さがあったらなぁ……皇帝に利用されて殺される事なんて無かったろうに。
 我が一族にのみ許された最強の殺し文句を聞いた大人達は全員、

(確かに)

 と今にも言いだしそうな表情で固まっていた。
 全国各地での氷の血筋(フォーロイト)に対するイメージがよく分かる反応である。それを意図して放った殺し文句だけどね!