「祖国にいた頃は騎士団長にたまに見てもらっていたぐらいだったが……帝国に来てからはアミレスの剣の師匠に師事している。つまりオレからすればアミレスは兄弟子……姉弟子? のようなものなんだ。そしてその剣の師匠が今アミレスの命で少しな」
「王女殿下と同じ師……」
「剣の師匠……魔法の師匠が別にいるって事かぁ……」

 殿下の話をするマクベスタは柔らかく笑った。殿下といいマクベスタといいその王女や王子という立場が似合わない程、幼く無邪気な笑い方をするな……と俺は考えた。
 こう言う場でしか殿下達はそんな風に笑えないのかと思うと、王侯貴族なんて立場もあまりいい事ばかりでは無いのかと思ってしまった。
 そんなマクベスタの姉弟子発言にイリオーデが嫉妬したような瞳となり、リードが遠い目となった。
 そんな二人の様子を見てマクベスタが少し迷うように「うーむ……」と唸る。

「……そうだな。恐らく、全員アミレスの魔法の師匠とは会った事があると思う」

 とマクベスタが言うと、

「何っ?」

 イリオーデがバッと顔を上げ、

「なんだと」

 シャルルギルが驚いたように目を見張り、

「いやいやまさかそんな……」

 リードが胸の前でナイナイと手を横に振って、

「いつだよ……」

 俺は記憶を手繰り寄せながら呟いた。
 三者三様の反応を見せた俺達に向け、マクベスタはいたずらっ子のような笑みを浮かべて。

「答え合わせはまたその内に。きっと驚くだろうな」

 そう言ってマクベスタは水を一口飲んだ。
 その時には既に、俺達はアミレスの師匠らしき人物を記憶の中から探し出そうとしていた。
 リードがまず最初に「……うん、誰も思い当たらないね」と断念し、その後は俺達三人だけで記憶をあたっていた。
 記憶を当たり初めてすぐに三人一斉に、

「あの侍女の女……」
「侍女しか思い当たらないな」
「……彼女なら、可能性はある」

 同じ人物を挙げた。
 するとリードが「え、侍女って何……? 誰……?」 と困惑し、マクベスタが「アミレスの唯一の専属侍女の事だ」と説明していた。
 そうか、リードは知らないのな……じゃあ彼女ではないのでは? マクベスタはさっき確かに俺達全員が会った事があると言っていたし。
 と思った瞬間、それを見抜いたかのようにマクベスタは口を開いた。