「オレの口から詳しく語る事は出来ないのだが……アミレスは師が特殊な上に、本人が努力を決して怠らぬ性格だ。勉学にも明るいし何事にも挑む強い心を持つ。オレ自身この一年強で彼女の姿勢から何度も学びを得た。彼女の存在に何度も刺激を受けた。そんなアミレスだからこそ、だれも成し得なかった事を実現させてしまうのだとオレは考えている」

 マクベスタは内に抱く殿下への心象を語った。それには俺も同意したい所なのだが……何だ、こう言っては失礼な気がするが、めちゃくちゃマウント取られた気がするんだが。
 オレはこれだけ殿下の事知ってんだぜ! って暗に言われてる気がしてならねぇ……マクベスタに限ってそんな訳ないんだが、俺の性根が歪んでるからか変な捉え方しか出来ん。
 これがアレか、前にメアリードが読んでた本に出てきた『幼馴染みマウント』ってヤツか。確かに妙に腹立つな。
 と身勝手な苛立ちを抱えていた時、イリオーデがマクベスタの言葉に少々疑問を抱いたようで。
 考え込むように俯いてイリオーデは呟いた。

「王女殿下の師とは一体どのような人物なのだろうか」
「…………オレ達の常識が通じない相手とだけ。アミレスの事だ、恐らく落ち着いて話せる時が来れば皆にも話すと思う。アミレスは相当皆の事を信頼しているようだからな」

 シュヴァルツの時もそうだった、とマクベスタは付け加えた。……どうやらあのガキは知ってるらしい。
 その返事を受け、イリオーデは満足そうに「そうか」と小さく笑った。
 伝聞ではあるものの、どうやらイリオーデは王女殿下に信頼されているという事実がたいそう喜ばしいようだ。
 あのイリオーデがこんなにも活き活きとしている姿が見られて俺としても嬉しい限りだが。

 本当に……イリオーデがずっと探し求めていた生きる意味がちゃんと見つかって良かった。
 もし見つかっていなかったら、アイツはどうなっていたのか……それを考えるだけで謎の不安と恐怖が襲いかかってくる。
 見つかる云々だとサラもだ。アイツも今どこで何してるのか分からんが……またいつか会えるといいな。一応サラの情報も集めてはいるのだが、成果はまるで無い。
 いつかまた会えると願う事しか出来ないのが歯がゆい。

「……そう言えば、師匠は無事に役目を果たせたのか……」

 今度はマクベスタが小さく呟いた。それにはシャルルギルが反応して。

「王子様にも師匠がいるのか、流石は王族だ」

 そりゃああの剣の腕で師匠がいないのはおかしいだろ、と俺は心の中で一言残した。
 俺達ですらイリオーデっつぅ師匠代わりがいたんだから隣国の王子にいない訳ないだろと思いつつ、呆れたようにシャルルギルを見つめる。
 この時、シャルルギルの天然はやはり手強いな、と再確認した。