「…………お前、オレサマの事を過剰に毛嫌いする割にはオレサマの話は信じるのな。人間ってマジで意味不明だわ」

 悪魔自体は胡散臭いけど、その言葉はあまり胡散臭くないから。それに……そもそも貴方が今ここで私に嘘つく理由が無いじゃない。そんな無意味な事を悪魔がする訳が無い。
 そう心で思い口を動かすと、悪魔の口が小さく開いた状態で固まり、その声も体も微動だにしなかった。
 私はここでふと思った。もしかしたら、先程の発言が悪魔の琴線に触れてしまったのかもしれない……と。
 だとしたら不味い。すっごく不味いなぁと思いつつ私は固唾を呑んで悪魔のリアクションを待つ事にした。

「……何か杞憂してるみたいだから親切心で言っておいてやるが、別にオレサマは怒ってる訳じゃァねぇよ。ただ、なんだ……驚いただけさな」

 ようやく悪魔が声を発したかと思えば、それはよく分からない内容だった。……とにかく怒ってないって事でいいのだろう、うん。

「あー……もういいわ、考えるのも億劫だ。本題に移るぞ」

 悪魔はそう言いながら立ち上がり、目の前に二つの真っ白な椅子を出現させた。その片方にどっかり座り、悪魔は長くしなやかな足を組んだ。
 そしてその正面、もう一つの椅子に座る事を強要してきた。何度も手招きされて断る事も出来ず、私もそこにゆっくり慎重に座る。
 そして悪魔は物々しい雰囲気を纏い、腰を据えて話し始めた。

「お前が今から解決しようとしてる病……草死病《そうしびょう》っつったか。あれは病じゃねぇ、呪いだ」

 っ!? ちょっと待ちなさい、どういう事なの?!
 私は椅子を後ろに倒して勢いよく立ち上がった。しかし悪魔の力によって元の状態に押し戻される。それでも、どういう事なのかと悪魔を強く睨むと。

「竜の呪いだ、アレは。あの土地の地下深くに眠る緑の竜が自身の命が尽きぬよう自己防衛にと辺りに呪いを撒き散らし、人間共を植物に変えてはその魔力も運命力も生命力も全てを吸い取り、生き長らえようとしている。それが草死病《そうしびょう》の正体──だからこそアレは病では無く呪いだ」

 竜の、呪い? 竜がオセロマイトにいるっていうの? そもそもどうしてこの悪魔はそんな事を知ってるのよ。
 必死に頭を働かせるものの、あまり効果は無く。それを察した悪魔がご丁寧に色々と話してくれた。