「アミレスは一体何を……」
「事前に結界の支柱を用意しておく事で、魔力消費を抑えられる上に結界も安定するんだよぅ。水の魔力で結界魔法なんてしたら尋常じゃない魔力消費が発生するし。おねぇちゃんのやり方はすっごく効率的だねぇ……あんなやり方を精霊が教える筈もないし、自己流かなぁ? 本当に面白いなぁあの子は」
「……シュヴァルツ、お前本当に何者なんだ?」
「え? 見ての通り超可愛い美少年だよっ」

 きゅるんって効果音が聞こえそうな笑顔のシュヴァルツと、混迷が隠し切れないマクベスタ……そんな二人による会話が聞こえてくる。確かにシュヴァルツは本当に何者なんだろうか。
 何で一目見て全部分かるんだろう、そう言う魔眼でも持ってるのかしら。全てを看破する魔眼とか……全てを見透かす魔眼とか。
 それはともかく、私は一度深呼吸をしてから、いざ結界魔法を発動させた。

「疑似領域、霧中《むちゅう》。流れ落ちよ、四柱《しちゅう》。四方の柱を繋ぎし水平線、その内側こそまさに遍く境界なり──深水四方結界《しんすいしほうけっかい》」

 定められた詠唱《のりと》。これによりこの結界魔法は私の構想《イメージ》に従い発動する。
 足元に広がる蒼き魔法陣。それは先んじて準備した四つの魔法陣と繋がり、一つの結界魔法の魔法陣へと化けた。
 四方には水の柱が立ち上り、それらを繋ぐようにシャボン玉のような薄い膜が出現する。やがてこの結界を包むように辺りに霧が立ち込めた。
 霧に紛れしこの空間は外界より隔絶され、水平線のごとき役割を成す結界によりここは例え外から認識されようと決して辿り着けぬものとなった。
 ありとあらゆる生命の延命を許可する水の結界……その一つがこの深水四方結界だ。
 ……この構成も詠唱文も私が考えたものだが、これは自信作だ。とてもかっこいいと思う。内なる厨二心が騒いでしまったからね。
 ほんと、超かっけーと思う。