「うん、楽しみにしてるよ。君が幸せいっぱいに笑ってる姿を見られる日をね」

 シルフもきっと、同じように笑ってくれているだろう。目の前には猫しかいないから、そういう表情とかはよく分からないけれど……本当に楽しみにしてくれている。
 それなら私は頑張れる。きっと、最後まで頑張れる。
 動機はこれで十分だ。私は幸せになりたくて、それを応援してくれる人が傍にいる……それだけで私は頑張れる。沢山努力出来るんだ。

「あ。シルフって魔法を使えるんだよね、教えて欲しいな〜なんて」
「それぐらいなら構わないよ。教えるのは魔法でいいのかい?」
「あっ、じゃあ剣術も! あと体術に処世術に……」
「剣術もだけれど、体術と処世術は普通に難しいなぁ……」

 精霊さんが魔力を司る存在である事を思い出し、私は思い切って師事を頼む。すると、何と快諾して貰えたのだ。
 調子に乗って剣術と体術と処世術も頼んでみた所、シルフを困らせてしまったらしい。しかし、体術や処世術はまだしも剣術だけは会得したいので私はまだまだ食い下がる。

「せめて剣術だけでも……だめ?」
「あああもう、君って本当にそういう所あるよね! 分かったよ、剣術はちょっと知り合いに頼んでみるから……」

 シルフが重苦しいため息と共に意外と早く折れてくれた。何とお知り合いまでも動員してくれるそうだ、何と有難い事か……!

「ありがとうシルフっ!」

 感極まった私は何度目かも分からないが、猫シルフをぎゅーっと抱きしめる。

「……本当に単純だなぁ、ボクって……」

 やったやったと騒ぐ私の胸元で抱き潰されそうな猫シルフから、微かな哀愁を感じたのだが、多分気のせいだろう。

 ……目が覚めたら、私は大好きな乙女ゲームに出てくる悲運の王女に転生していた。
 何かと殺され死んでしまう彼女の運命をねじ曲げて、私は生き延びて幸せになると決意した。
 私は幸せになりたい。死にたくない。生きて出来る限りの未来と幸せを守りたい。
 だから私は努力する。超努力家のアミレスに転生したんだから、努力してこそじゃない!

 ──よぅし! 目指せ、ハッピーエンド!!