暫くして、雷虎《プラズマタイガー》の休憩がてら私達は昼食をとることにした。場所は広大な草原…風がとても気持ちよく、春と言う事もあって気温もとてもいい。
 まさに絶好のピクニック日和! ……と言いたい所なのだが。私達はそれどころではなかった。

「……本当にすまない。オレがもう少し手綱を握れていられればお前達はきっと……」
「俺も馬車から振り落とされねぇようにするのに精一杯だった……すまん……」

 御者席組が幌の幕を掻き分け、申し訳無さげな面持ちを作り謝罪を入れてきた。
 しかし、壁も掴まる場所も無い御者席に座っていた二人の方がきっと大変な思いをした事だろう。
 そう考える私は、二人に謝らないでと言った。

「整備されてない普通の道なんだから仕方ないよ。二人は何も悪くないって! ね、そうでしょリードさん!」

 くるりとリードさんの方を振り返りそう話を振ると、リードさんは人のいい笑みで同意した。

「そうだね。あぁそうだ、二人共どこか痛めてないか? 必要があれば治すよ」
「いいのか? じゃあこいつの手を……爆走する虎の手綱を握ってたからかすげぇ赤くなってんだ」
「いやオレは大丈夫だ、それよりも、オレの事まで支えていてくれたディオの方を……」
「オーケイ、二人共だねー」

 仕方ないなーと言わんばかりの表情を作るリードさんは、一旦荷台から降りて御者席に座る二人の方へと向かった。
 それに続くように私達も次々に荷台から降りる。
 そしてシュヴァルツがどこからとも無く大きな布を出し、それを草原の上に敷いた。その上に皆で座り、昼食用に買っておいた物を袋から取り出して用意する。
 これぞまさにピクニック。なんて事を考えながら、街で見かけた時代の先をゆく新感覚パン! と言う触れ込みだったパンを手に取り、それを頬張る。
 何やらその際にリードさん達が私の方を見て、更に手を伸ばして固まっていたのだが、もしかしてこのパン狙ってたのかしら。
 取っちゃって申し訳無いなぁと思いつついざ実食。

 むむっ、なんだこれは……っ、中にジャムらしき物が入っている……!! この世界にはまだジャムと言う文化は無いみたいなので、これは恐らく『果実を煮込んだもの』であり、それをパンの中に入れてみたって事なんだろうけど……。
 なんだろう、前世では普通だったもののこの世界では新しいこの食べ物に、私は感動していた。
 新感覚とか関係なくジャムらしき物が美味しいからでもある。多分旬なんだろうね、これも多分ジョーヌベリーだわ。
 私、本当にジョーヌベリー好きなのかもしれない。無意識でジョーヌベリーを求めているから、手に取るものが大体ジョーヌベリーなのかも。
 このジャム入りパンを味わい頬を緩めていると、シュヴァルツがくいっとドレスの袖を引っ張ってこちらを見上げてきた。