「さて。今回の議題は──背信者の粛清だ」

 まさに神の代理人と呼ぶべき眩く神聖な微笑みで彼は告げる。
 それは国教会が信仰する天空教の教義に反する行為を取った者を粛清する合図。
 それはその場にいた大司教達を一気に緊張状態へと追いやる最後の審判。
 ただ一人全く動揺する様子を見せない枢機卿ラフィリアを除き、十一名の大司教達は互いの顔を見ては疑心暗鬼にどよめきだす。
 そんな彼等彼女等を見てミカリアが更に口を開く。その瞬間、大司教達は一斉に口を閉ざした。
 ミカリアの言葉を遮る事も阻む事も許されないからである。

「教義に反した愚か者がこの場にいる。さぁ、悪を抱く者は大人しく名乗り出よ」

 ……これより数分後。一人の大司教が名乗り出た事により早々にこの粛清と議会は終わりを迎えた。
 ミカリアは、我が身可愛さに救いを求める声を足蹴にした大司教を許さなかった。そして粛清が終わり、改めて彼は大司教達に命令する。
 ──このような、教義に反する事が二度と起こらぬようにせよ。と……。
 それと同時に、数時間前の侵入者の件が上位精霊の仕業である事も大司教達に話した。それを聞いた大司教達は若き司祭達の大きな過ちに気づき頭を抱えたとか。
 そうして議会は終わり、ミカリアは自室に戻りながら枢機卿ラフィリアと話す。

「神々の愛し子の保護は後どれぐらいで片付きそうだい」
「……五日、保護完全完了」
「そう。じゃあ数日後に少し出かけるから」
「例、吸血鬼?」
「いいや違うよ。今回は……勇敢なお姫様の所だ」

 ラフィリアの方を振り返り、少年のような笑みでミカリアは話した。
 そして数日後──神殿都市の大聖堂から突然聖人が姿を消した事で大騒ぎになるとか、ならないとか。