(うーん、でもやっぱり……ルムマがあたし以外のヒトとばかり話してるのはやだなぁ。ヤキモチ妬いちゃう)

 その包容力の塊のような性格からはあまり想像がつかない程、ラブラは実は嫉妬深かった。ルムマに対してだけだが。
 この相思相愛の二人と関わるのは、非常に精神衛生によろしくないと最上位精霊達の間では有名な話だそう。
 しかしエンヴィーは今、そんな二人と関わる事を強要されているのだ。

「……デートのついでにエンヴィーを回収させてくれてありがとう、ルムマ」
「ラブラのお願いならお安い御用だ。ほら、さっさとこの馬鹿をリバース達の所に連れて行ってデートの続きをしよう」

 エンヴィーの事など無視し、ラブラとルムマが唇と唇が触れてしまいそうな距離でいちゃいちゃと微笑み合う。
 その傍らで居心地悪そうに表情を歪めるエンヴィーだったが……突然ルムマに首根っこを掴まれ、突如生まれた空間の歪みに投げ込まれる。
 お邪魔虫をさっさと処理したかったのだろう。だとしても手荒なやり方だ。

「っい、だ……ッ、くっそルムマの奴雑なんだよ……!」

 暫く宇宙のような穴を落下し続けたかと思えば、突然地面が現れてエンヴィーは頭から着地した。
 周囲には至る所が星空のように瞬く幻想的な光景……されどエンヴィーにとっては馴染みのある景色。ここが精霊達の世界、精霊界なのだ。
 頭を擦りながらエンヴィーが上体を起こすと、その背後に一つの人影が現れる。

「やっほーエンヴィー。俺やでー」

 肩口で切り揃えられた空色の髪を揺らし、エンヴィーを上から覗き込むようにして胡散臭い男は笑った。
 エンヴィーはその男の笑顔を見て露骨に嫌そうな顔をした。

「……ハノルメ、まさか、お前も?」
「リバースはほんまに天邪鬼な子やからなぁ、エンヴィーん事全然心配してないって何回も言うてたよ。そんであいつ、近くにおった最上位精霊達に声掛けてんで〜」

 エンヴィーの予想は的中した。ハノルメもまた、ラブラとルムマ同様にリバースより頼まれたのだろう。
 彼等がここまでしてエンヴィーを精霊界に連れ戻そうとしていた理由……それについてはエンヴィーとて心当たりがあるものだった。
 リバースが退去する際、エンヴィーにかけた言葉……それは『後遺症が現れる前に早く帰って来い(出て行け)』と言う内容だった。