(そもそも、あのアンヘル君が僕に贈り物をくれた事が青天の霹靂だったしなあ)
(…………俺、特訓で使う物以外で姫さんに何かまともな物をプレゼントした事あったか? ねぇな! あー、ぬいぐるみー……贈ったら姫さんも喜ぶのか……?)

 二人はまさに正反対の表情を作り考え事に耽けっていた。
 エンヴィーに至ってはかなり真剣に悩んでいるようだ。そしてエンヴィーは思う。

(あの姫さんがぬいぐるみ貰って喜ぶか……? なんてったってあの姫さんだぜ? 星剣あげたら目ェきらきらさせて喜んでた姫さんだぜ??)

 アミレスとの剣術の特訓にて。木剣による特訓を終え真剣での特訓に移行する際、エンヴィーは女の子たるアミレスの為に特別な剣を用意していた。
 それは精霊界でのみ採取可能な星空の如き輝きを放つ鉱石、星雲石をふんだんに使用した魔剣だった。
 魔剣としての能力は重量操作。アミレスが持つととても軽く感じる長剣《ロングソード》なのだが、その攻撃自体にはなんと大剣程の威力と重量がかかっていると言う……。
 簡単に言えば……アミレス専用の馬鹿みたいに強く希少な剣なのだ。
 ちなみに、あの剣を鍛えたのは他ならぬエンヴィーである。石の最上位精霊と鋼の最上位精霊、そして智の最上位精霊に助力を仰ぎ作り上げた至高の一本──それが、あの白銀の長剣《ロングソード》なのだ。
 勿論、アミレスはそんな事知りもしないが。

(……でも姫さんって意外と可愛いものとか好きだからな。何でか知らねーけど、自分には可愛いものは似合わないとか思ってるらしいけども)

 全然似合うのになァ……と思いつつエンヴィーは深くため息をついた。
 そしてエンヴィーは気を取り直して本来の目的を果たさんと動き出す。懐より一通の手紙を取り出してミカリアに手渡した。
 ミカリアは渡された美しき手紙を見て目を見張った。何故ならその手紙には……かの大国、フォーロイト帝国が皇家の紋章が封蝋にて押されていたのだ。

 ミカリアは瞬時に理解した。かのフォーロイト帝国が公的手段では無く上位精霊を使ってまでして、聖人である自分に直接伝えなければならない程の事柄が起きたのだと。
 天空教を国教と定めている訳では無いフォーロイト帝国と、天空教を信仰する国教会はとても密接な関係……と言う訳もなく付かず離れずの関係だった。
 同じ大陸西側に領地を構える国家と都市らしく絶妙な関係を保っていたのだ。

 フォーロイト帝国は帝国内での天空教の布教を認めるし、たまに国教会へと寄付もする。代わりに、国教会は帝国での有事の際にその力を費やしてくれ。
 ……そんな、互いに何かあれば協力はしよう、ぐらいのギブアンドテイクな関係だったのだ。