「……もしかして、リバースさんがずっといるのは」
「姫さんとの仮契約が残ってるからですね」

 ですよね! なんか本当にごめんなさいぃ!!
 ちらりとリバースさんの方を一瞥すると、彼は虫けらを見るかのような目で私を見下していた。ああ、無知でごめんなさい!!

「……不要とは存じ上げますが、一応お伺い致しますね……リバースさんは本契約の方はどうなされ……」
要らん(要る)!!」
「ですよね要りませんよねハイ知ってましたよえぇ!」

 念の為に恐る恐る確認したが、食い気味でリバースさんが要らん! と答えた。相変わらず逆の権能とやらの影響で、逆の言葉を口にするからややこしいけれども。

「では仮契約を破棄させて頂きたく……」
「それならば僕の方でやっておく(やらない)から。ので僕はもう帰る(行く)

 リバースさんが『お前と関わるつもりはもうねぇんだよ』と言いたげな程に殺意の籠った目で一睨みして来た。
 目は口ほどに物を言うとはこの事だったのか……っ!
 これはあれね、僕の方でやっておくからさっさと帰らせろって事ね!

「はい分かりましたお任せします本日はどうもありがとうございました!! お勤めご苦労様です!」

 そう言って平身低頭すると、淡い光に包まれてリバースさんの姿が消えていった。どうやら仮契約は無事に破棄され、帰る事が可能になったらしい。
 そして、何やら去り際に師匠に向け小声で言葉を残していったようで……師匠はそれに困っているようで、「どうすっかなァ……」 とため息をついていた。
 一体何を言われたんだろうと思ったが、私が気にする事では無いか。と結論づけてその事を思考から外した。
 今度は寄り道もせず真っ直ぐ皇宮まで帰る。
 戻ったら模擬戦でもしようかと言う話になり、私は早く帰って模擬戦がしたいあまり、マクベスタの手を引いて駆け足で皇宮へと向かったのだった。

 ──しかし、それは叶わない事だった。
 皇宮に戻った私達にどうしようも無い問題が突きつけられるなど……この時の私達には、知る由もなかった。