「ぷっ……姫さんって本当に変に素直っすよねぇ、普段めっちゃ頑固なのに」
「んな、失礼ね! そんな事言うなら貴方の火全部消火し尽くしてやるわよ!」
「ははは、消火出来ねぇ程燃え続けてやりましょーか? 我慢比べってヤツだ!」
「やってやろうじゃないの! 絶対に、貴方の炎は私が全部消し去ってやるわ!!」

 師匠がケタケタと笑いながら煽ってくるので、売り言葉に買い言葉で少しだけ魔法を発動する。手のひらに水を出しながら臨戦態勢に入った。
 しかしそんな私の頭に軽いチョップが落とされる。それはマクベスタによるもので……。

「ここはシャンパージュ伯爵邸だぞ。皇宮ならまだしも他所の家で何を暴れようとしているんだお前は」

 マクベスタが呆れたような顔で冷静に突っ込んでくる。何もかもマクベスタが正しいので私は何一つ反論出来なかった。
 そしてマクベスタが一度お辞儀をして、

「……騒いでしまって申し訳ない。もし良ければ、そろそろどこかに通して貰えると助かる。ここだと……いつどこに人の目があるか分からない」

 と執事長に訴えた。ハッとしたように動き出した執事に案内され、私達は前来た時にも通された客室に通された。
 ……先程のマクベスタの発言、あれは双方にとって言える事だった。
 向こうはメイシアの魔眼、こちらは師匠の正体……どちらも大きな声では言えないような情報だからこそ、こんな所で話を長引かせるのもどうだとマクベスタは主張したのだ。
 まぁ……最後の方はただ私と師匠が喧嘩してただけなんだけども。
 そして通された部屋で紅茶が並々注がれたカップをカチャリと置いてから、メイシアはおもむろに魔眼の事を話し始めた。

「……精霊様の言う通り、わたしの眼は魔眼で……延焼の魔眼と言うものなんです。見たもの全てを燃やす事が出来る魔眼で、わたしの火の魔力と相まってとても危険なものなんです」

 ぽつりぽつりと小雨のように少しずつ話すメイシアの肩は震えていて……「黙っててごめんなさい」「話したらきっと怖がられると思った」と話すメイシアの肩を、私は優しく抱き締めた。
 謝るのは私の方なのに。貴女の魔眼の事も魔力の事も最初から知っていたの。それなのに何も知らないフリをしていたの。
 罪悪感から酷く胸を締め付けられる。ズキッと痛むそれは、メイシアが涙声で一言発する度に強く深刻になって行った。

「……お嬢さんの場合、魔力量が多いのも魔眼への恐怖を煽る原因なんだろうな。魔導具で魔力変換効率を抑えに抑えているが、それでも常人よか魔力変換効率がいいからなァ……こりゃ産まれた時とか相当大変だったろうな」

 師匠がさりげなく放った言葉に、メイシアが強く反応した。どう言う事なのと聞き返すと、師匠が視線をグルグルとさせながら説明を始めた。