「ちょっと! 何をそんなにあっさり話しちゃってるのよ!」
「姫さんがあれだけ言う人間だし、話しても問題無いかなーと思いまして」
「貴方自分の正体分かってます?!!」
「はははっ、まぁ別に珍しいってだけでこの世界にも精霊はそれなりにいる事ですし、問題ないっすよ。多分」
「多分!?」

 私は師匠の胸ぐらを掴んで引っ張り、彼の耳元で小声で問いただした。それを師匠はヘラヘラと笑いながら適当に流す。
 確かに精霊さんはこの世界にも普通にいるという。一般的に目撃される精霊は下位または中位の精霊。精霊召喚で召喚されて使役されるのも大体この辺りらしい。

 とても魔力を持ち精霊と縁のある者が上位の精霊を召喚して契約を結ぶ事も稀も稀……奇跡的にあるそうなのだが……それは相当有り得ない事で、そんな事が出来るならば歴史に名を残せるだろうとシルフは言っていた。
 上位精霊ともなると、基本的に自我が強く人間の都合で召喚されるのを酷く嫌う傾向にあるとか。なのでそもそも召喚に応じて貰えないらしい。

 その結果、魔力がもっと欲しいだの強くなりたいだの願う人間が精霊召喚を行い、中位の精霊を召喚出来ただけで精霊に愛された実力者と言われているそうな。
 その点、悪魔召喚(別名:魔物召喚)はそれ相応の対価と代償さえきっちり用意しておけば狙い通りのモノが召喚出来るとかで、せっかちな人にはそっちの方が人気らしい。

 話が逸れてしまった。つまりこの世界にも精霊は全然いる……全然いるのだが、いても下位の精霊で存在感も弱い。
 ここでこの火の精霊を見てみよう。うーん、存在感の塊。この精霊さん絶対上位の精霊さんだと思う。
 師匠がどんな精霊かは今はとりあえずどうでもいい。問題なのはそれをあっさり明かしてしまった事だ。魔眼を見抜いた事に関する筋を通す為とはいえ、やり過ぎな気もする。

「ま、そーゆー事なんで。そこのお嬢さん、何か魔力とか魔眼の事で悩んでる事があるなら特別に俺が相談に乗ってやるぜ?」

 私の拘束から解放された師匠はメイシアに向けてヘラヘラ笑いかける。それを警戒するように、メイシアは一歩後ずさった。
 そのメイシアを守るように、執事長がメイシアの前に出た。

「……彼が精霊と言うのは本当ですか、アミレス王女殿下」
「……はい、それは私が保証します。師匠は紛れもなく精霊です」

 執事長がちらりとこちらに視線を向けてきた。私はそれに頷いて答える。
 それを受け、執事長は改めて師匠の方を向き真剣な面持ちを作った。

「…………精霊様、とにかくお嬢様の魔眼の事は御内密にして頂けませんか。当家でも箝口令を敷いている内容でして」
「構わねぇよ。うちの姫さんももうその事を喋るなって言いたそうな顔してるし」

 師匠がちらりとこちらを一瞥し、突然そんな事を言い出したので、私は慌てて自分の頬に触れる。