「見て、あの男性とてもかっこいいのになんだかとても可愛らしく見えるわ……!」
「あれは異国の服かしら、背の高い彼にとてもお似合いね!」
「ああっ……あの無邪気な笑顔を向けられたい…っ」
「あんなにも美しい男性がこの世界にいるなんて……」
「何でだろう、あの男を見てると色々と教えてやりたい気分になるんだが……」
「おおう、色々と、な……」

 道行く女性達がエンヴィーさんを見て、頬を染めてきゃあきゃあと騒いでいる。しまいには男性でさえもエンヴィーさんに目を奪われているようだった。
 そんな状況でエンヴィーさんの連れの私達はと言うと……。

「ねぇあそこの金髪の少年もとても……」
「それなら私は隣の可愛らしい少年の方が好みだわ」
「激しく同意しますわ」
「あの可愛らしいお顔なら大人に弄ばれてしまいそう……」
「泣き顔がきっと似合うわ」
「激しく同意しますわ!!」

 エンヴィーさん同様、黄色い声と熱烈な視線に晒される事に。と言うか、割と恐ろしい事を言ってるわよ……街の淑女《レディ》達……中々にいい癖してるじゃあないか……。

「……師匠、そろそろ行かないか?」
「あっ、悪ぃ悪ぃ。こっちの世界には滅多に来ないから、何もかもが真新しくて……ちょっとはしゃぎ過ぎたか」
「師匠……」

 マクベスタがエンヴィーさんの手を引いて、そう促す。エンヴィーさんは恥ずかしそうに目を逸らしながら謝った。それにマクベスタが困り顔を作る。
 エンヴィーさんは私の為にシルフが精霊界から連れて来てくれた精霊さんだ。人間界に来ても皇宮で私達に剣を教えるだけで、私同様城の外に出た事は無かったらしい。
 だからこそ、初めての外と言う事ではしゃいでいるようで……なんだか数日前の自分を見ている気分になる。

「ねぇ、マクベスタも帝都はあんまり見て回った事ないんだよね?」
「ん? まぁそうだな……」
「私も帝都に出るのはまだ数回目だし、エンヴィーさんだって初めてなんだから。この際だからちょっとだけ見て回ろうよ!」
「姫さん……!」

 私の提案にエンヴィーさんが嬉しそうに頬を綻ばせた。……本当に可愛い人だなぁ。この精霊さん。
 そんなエンヴィーさんの表情を見て、マクベスタは観念したように瞳を伏せた。