「改めまして……私は、アミレス・ヘル・フォーロイト。一応この国の王女です」

 フォーロイト帝国を代々統治する最も高貴なる血筋──それ即ち、皇家。
 継承権争いが起きた訳では無く、歴代で最も皇族の数が少ないと聞く現在にて……たったの三人だけの皇族である筈の王女殿下が……なんでこんな所に。
 驚きのあまり言葉が詰まる俺達に向けて、あいつは名乗った。
 それにより事の重大さを急激に理解した俺達は、凄まじい勢いで頭を垂れた。
 皇帝陛下と皇太子殿下に次ぐ尊き存在、それが王女殿下だ。俺は、俺達はそんな相手に今までとんでもない態度で接していたのだ。
 ただの貴族令嬢でもだいぶ不味いものだったが、相手が皇族となれば不味いどころの話では無い。それも……相手は無情の皇帝の娘なのだから。
 態度を一変させ謝罪する俺達に、スミレ……いや、王女殿下は頭を下げるなとか謝罪するなとか無茶な事を言って来た。更に、

「私相手に敬語を使わないでください。無理に態度を取り繕わないでください。どうか今まで通りに接してください…………何があろうと、私はそれを一切咎めませんので!!」

 聞く人が聞けば卒倒しそうな事を次々に宣った。その証拠に王女殿下の後ろに待機する侍女が青い顔をしている。
 現帝国唯一の王女殿下がそれでいいのか?! と俺はとても狼狽しかけていた。
 疑う余地など全く無いのに、俺は何故かこいつ本当に皇族か……? と疑ってしまった。