その次は……もう、俺達の所にはいねぇけど……ほんの一年間だけ俺達が世話を焼いていたガキがいた。
 そいつの名前はサラ。名前が無いと言っていたから俺達で名前をつけてやったんだ。
 何も知らないし何も出来ない奴だったけど、教えたら全部覚えるし何かやらせたら何でも出来るすげぇガキだった。
 あいつと出会ったのは九年前……俺が十四だかの時。そして別れたのは八年前だ。
 一年間共に過ごしていたのに、サラはある日忽然と姿を消した。なんの前触れも無く、『またね』と書かれた手紙を置いていなくなった。
 しばらく街中を探し回ったが、サラは見つからなかった。……それ以来、一度もサラとは会えていない。
 今頃どこで何してんのか……無事に生きてるならそうと言って欲しい。俺達だってずっと心配してるんだ。

 そして最後はメアリードとルーシアンだった。
 まるでサラと入れ替わるかのように、サラがいなくなった直後にメアリードとルーシアンは俺の家にやって来たのだ。
 二人の手を引く見知らぬおばさんが、二人の事情を話してくれた。
 父親が癇癪持ちの賭博狂いな酒浸り、母親は毎日家に知らない男を連れ込んでは日夜汚い嬌声をあげ、頼みの姉は二人の生活費の為に日々出稼ぎに行き、その給料を父親に奪われ続けている。
 そして……その姉が仕事の帰りに、街のクソみてぇな大人達に襲われてぐちゃぐちゃに壊され、路地裏で心身共に壊れたまま数日間放置された結果……死んじまったらしい。
 このおばさんは二人の近所に住む人だそうで、姉共々二人の面倒をよく見ていたらしい。
 こんな状況だから自分が引き取ろうと思ったそうだが……最近おばさんの旦那が病死しておばさん自身も相当参っている為、二人の面倒を見てやれる余裕が無いらしい。
 だが頼みの姉も死んでしまい、親は典型的なクズと来た。このままでは二人の今後が危ぶまれると考えたおばさんは、噂に聞いた悪ガキ集団の元に連れて行く事にしたのだとか。
 メアリードとルーシアンは当時七歳と六歳で、そんな家庭環境に生きていたからか精神的にも肉体的にもとても幼い状態だった。
 幸いにもうちにはイリオーデがいるから読み書きやらを教えてやる事は出来る。このおばさんも、藁にもすがる思いで俺達を頼りに来たのだと俺は判断し、メアリードとルーシアンを受け入れる事にした。
 ここまで人数が増えているのだから、この際いきなり一人や二人増えてもなんら問題ない。
 そうやって秘密基地(俺の家)に住む事になって二人にも色々と教える事数年……メアリードもルーシアンも元気に成長してくれた。
 親代わりとしては嬉しい話だが…………まぁ、まさかあんなに小生意気になるとは思わなかったが。