「……別に、私がどこで何をしていようと兄様には関係ないかと。そもそも、兄様は私に興味など欠片もないでしょう? 私を疎ましいと思っているのでしょう? ならば、私に関わらないで下さい。私も兄様には関わらないようにしますから」

 顔を上げ、フリードルの瞳を真っ直ぐ見つめながら言い放つ。
 その彫像のような美しい顔に少しの変化が訪れる。それを勝機と見て私は畳み掛ける。

「それでは御機嫌よう、兄様。また会う時まで」

 もう出来れば会いたくないけどね。と思いつつも、微笑みと共にスカートの裾を少し摘んでお辞儀をし、私はフリードルの横を通り過ぎる。
 私の反抗的な態度に呆気にとられたのか、目を点にしたフリードルは黙ったままその場でしばらく立ち尽くしていた。
 その通路を抜ける時に一度振り返ってみたのだが、フリードルはその場から動いていなかった。
 こんなしょうもない事で何を馬鹿なと言われてしまいそうだが、私はふふんっ、と勝ち誇っていた。
 だってあの鼻につく男に言い返せた上に無事に逃げられたんだもの。それだけでも個人的には大金星だ。
 ……ただ父親がそうしているからという理由だけで妹を疎み蔑んでいたこの男に、いざその妹になると苛立ちしか沸いてこない。だがそれでも憎いだとか恨めしいだとか思えないのが、アミレスの残滓の影響なんだろう。

 しかし、だ。そう考えると私が今フリードルに言い返した事はアミレス的には問題無い事なのだろう。
 フリードルを愛していたが、アミレスももしかしたら色々と思う事があったのかもしれない。
 つまりこれからもフリードルとどうしても関わらざるを得ない時は、フリードルとやり合ってもいいと……バットエンドが近づくだけではあるが、もしもの時は仕方がない。その時は私も本気で相対しようじゃあないか。
 決して、今度こそぎゃふんと言わせたいとかいう訳ではないよ。全然そんな事はないよ。うん。