『……ごめん。俺にできるのは、毒を操る事だけだから……毒で苦しんでるんだったらなんとか出来たかもしれないけど、病気は……』

 シャルルギルがそう言いながら頭を下げると、バドールは悔しそうに地面を叩きつけた。
 その時、ラークがボソリと呟いたのだ。

『──病気もさ、人間の体にとっては毒なんじゃないかな……』

 俺はその言葉の意味が分からなかったが、それを聞いたシャルルギルはハッとしたように『病気が、人間にとって毒…………』復唱した。
 そしてシャルルギルがエリニティに触れ、魔法を使うと……なんと、エリニティの風邪が嘘のように治ってしまったのだ。
 その事にバドールは強く感謝し、それ以降エリニティと共によく俺達の元に来るようになった。
 それと同時に俺達は知る事になった。魔法とは使う人間がどう考えるかによって、使い勝手が変わってしまうのだと。
 病を治すなんて芸当、光の魔力を持つ選ばれた人間にしか出来ないのに……シャルルギルはそれが出来てしまった。とんでもない荒業ではあるが、確かに出来てしまったのだ。
 シャルルギルははっきり言って馬鹿で天然だ。人を疑う事を知らないし、何でもかんでも言われた通りにしちまう。
 こんな事が出来ると悪い大人に知られてしまっては、シャルルギルがどうなるか分かったもんじゃねぇ。だから俺とラークはシャルルギルに、俺達二人の許可無しに人の病気を治すなと言いつけた。
 更に、バドールにも誰にも言うなと何度も釘を刺した。
 例に漏れずシャルルギルはそれに大人しく従い、それ以降はそう言う用途ではあいつに一度も魔法を使わせていない。