そこで私は考えた。彼のこの発言……もしや私に取り入ろうとしているのでは、と。
 そうでも無ければ初対面で私に忠誠を誓うとか有り得ない話なのだ。そこまでアミレスにカリスマがあったなら、ゲームでアミレスが簡単に殺されてたのがおかしな話になる。
 だからそれは有り得ないと断言出来る。
 私は言わば金の成る木、いいカモなのだ。いい感じにゴマをすっておけばおこぼれに与れると思っているのかもしれない。
 もしくは、私に忠誠を誓い、コネでそれなりにいい職につかせてくれと言う魂胆かもしれない。
 ……どちらにせよ、私が焦る必要は何も無いじゃない。イケメンが突然跪いてそんな事言うから過剰に反応してしまったわ。

「わざわざ私なんかに頭を下げなくてもいいよ。いくら必要があるからってそんな事しなくても、こっちで色々考えてあるから」
「…………何を言って……?」

 私に取り入る演技とは言えこうして野蛮王女に跪かねばならないなんて可哀想だな……と思い、私はイリオーデの肩にポンっと手を置いて、もう片方の手で親指を立てる。
 そして柔らかく微笑んでみると、イリオーデがスっと顔を上げては眉をひそめていた。
 紹介も終わった事だし、タイミングもいいので、わざわざ皆さんをここに集めてもらった例の目的を今から果たす事にした。

「実はね、私──皆を雇う事にしたの! ……本当は騎士として重用したかったんだけど、騎士は騎士団の入団試験と昇進試験っていうのを通過しないと名乗ってはいけない上、そもそも私は騎士を持つ事が許されてなくて。だからその代わりに、王女の子飼いの私兵って言う名目で皆に安定した給料と名誉を与えたいなと」

 パチンッと指を鳴らし、ハイラさんが持つその旨の許可証を受け取り皆さんにお見せする。ちなみに、勿論これもケイリオルさんからもぎ取ってきたものだ。
 ディオを始めとした大人の方々がギョッとしながらその許可証を見つめ、困惑したようにザワついていた。

「……ただ、今はまだ私の下にいた所でなんの名誉も得られません。私は出来損ないの野蛮王女ですし。でもいつか必ず貴方達の主として相応しい人間になるから。私を信じてくれた貴方達を裏切らないよう、努力するから」

 そして私は、あの夜と同じ様に……ディオに向けて手を差し出す。この話を受けてくれるのなら、私の手を取って。
 そう、口にせずともディオは理解してくれたようで……。