ラークと共に現れたのは九名の男女。中には私と同い歳ぐらいの子供もいた。
 彼等彼女等の大半が私達の姿を見て一様に誰だと眉をひそめていたが、檻の前で会話もしたエリニティさんとバドールさんは、私の姿を見て手を振ったり小さく微笑んだりしてくれた。
 私は彼等彼女等の事をディオの仲間自慢を聞いたから何となく知っているのだが、この人達は私の事を知らないのかもしれない。
 自己紹介しようかと椅子を少し引いた時、ディオが私の代わりに紹介へと移ったのだ。

「紹介する。こいつが例の取引を持ちかけて来たガキ、スミレで……本名言ってもいいか?」
「勿論、少なくとも貴方達にはもう嘘をつきたくないから」
「……そうか。で、こいつの本名だが──アミレス・ヘル・フォーロイト様だ」

 その瞬間、彼等彼女等の顔に驚愕が浮かぶ。
 ダークグレーの髪の美青年が強く眉間に皺を作りこちらを睨んでくる。……貧民街が存在するのは私達貴族や皇族の怠慢だ、その事で恨まれていてもなんらおかしくはない。
 だからこそ恨み言の数々を私は覚悟していたのだが……彼等彼女等から発せられたのは予想外の言葉だった。

「…………妙だな、銀髪じゃない……」

 眉間に皺のあるダークグレーの美青年がボソリと呟く。

「えー……皇帝の娘って事? そりゃあ強いわ……」

 今の私よりも少し薄い桃色の髪の少年? がか細い声で零す。

「ねぇねぇめっちゃ可愛い子いるよ!」

 獣の特徴を持つ黒髪の元気な少年が、私を指さしてはしゃいでいる。

「てかオレの天使メイシアちゃんはいないのか?!」

 猫目の人、エリニティさんがメイシアの姿を探しては落胆している。……この人まだ諦めてないのか?

「王女様って意外と素朴な服着てんのね……」

 赤髪の美人なお姉さんは、頭からつま先までまじまじと私を見つめている。

「……しまった、こんな事なら先日作った菓子を持ってくれば良かったな……」

 筋骨隆々のバドールさんがハッとしたようにため息をつく。

「フォーロイトって事はさ」

 檸檬色のセミロングの美少女が隣に立つ瓜二つの美少年に話しかけ、

「王女って事?」

 同じ檸檬色の髪の美少年が眉を顰める。

「…………っ」

 肩下辺りまである青い長髪を揺らして、とんでもない美丈夫は慌ててそっぽを向いた。
 なんと、誰一人として罵詈雑言を発さなかったのだ。と言うか割とどうでもいい事ばかり話しているようだった。
 ……じゃあなんでダークグレーの美青年に睨まれたんだ?
 と疑問符を抱えていると、それに答えるかのようにラークがダークグレーの美青年に声をかけた。