「わぁっ! 見て見てシルフ、凄い綺麗な庭園だよ! きっと庭師の腕がかなりのものなんだろうね」
「本当だねぇ〜、それにしても君は本当に賢いね。幼いのに偉いなぁ」

 シルフがふんわりと核心に触れてきたので、私はそれを適当に受け流す。

「まぁ王女だし!」
「確かに王女だもんね」

 シルフはこれで納得してくれたらしい。ありがたいな。
 さて。現在、私達はこの建物の一階にあたる場所にいる。
 しばらく歩いていると宮殿のような開けた通路に出て、その先には一面に広がる美しい庭園があったのだ。色とりどりの花が溢れんばかりに咲き誇り、太陽の光をスポットライトとして輝いている。
 この景色、ゲームで見た事ある! 兄のルートでミシェルちゃんとデートしてた場所だ。つまりこれ聖地巡礼じゃん?!
 と、オタクな私のテンションは一気に跳ね上がり、庭園に向けて駆け出す。シルフが「あっ、待ってよアミィ!」という声を上げていたが、気にせず庭園へと足を踏み入れようとする。が、しかし……。

「……あれ。何で、足が動かないの……?」

 庭園に入る寸前にて、私の足が突然動かなくなった。一歩を踏み出す事が出来ない。後ろに下がる事は出来るが……何故か進む事が出来ないのだ。

「〜〜っ!?」

 その時。突如、針を刺されたような頭痛に襲われた。
 その場で頭を抱えて蹲り、私は荒くなる呼吸の中思い出す。……いいや、正しくは……アミレスの記憶を見た。
 目の前にはたったの二つしか変わらない兄の姿。
 兄は、アミレスの事を酷く冷たく見下ろしている。
 そして彼は言った。

『あそこは父上の庭だ。何があろうと、お前だけは入ってはいけない。絶対にだ』