「ふふっ……自分だけの名前で呼ばれるのって、何だか胸が暖かくなるね」

 自分の胸元に手を当てて、ボクは思う。
 皆が当たり前にしてきた、誰かに名前を貰ってその名前で呼んでもらうという行為がここまで尊いものだったなんて。
 今までボクは知らなかった。名前が無かった事もそうだけれど、名前を欲しいとも、名前で呼ばれたいとも思って来なかった。役職名で呼ばれていても、それは今、ボクだけを示す言葉だったから……別に、他の固有の名称が欲しいとも思わなかったんだ。
 でもね、大好きな人間の中で特に気になった君と話して、君の名前を聞いてそれを呼んだ時。
 ボクは生まれて初めて『ボクだけの名前』が欲しいと思ったんだ。
 君に名乗れて、君に呼んでもらえる……そんなボクだけの名前が。
 まさかそれを君がくれるなんて思ってもいなかったのだけれど。…………ものすごい、宝物になったな。
 君がボクに『シルフ』という名前をくれたから、ボクは君に名乗り君に呼んでもらえるんだ。全部全部君のおかげだよ。

 ありがとう、アミレス──あぁそうだ、ちょっと変えてアミィとかどうだろう。ボクだけの呼び方だ。
 ボクの友達になってくれた特別な君だからこそ、他の人がしない呼び方をしたい。
 愛称と言うんだったかな、それで良いじゃないか。……良いって? 本当に? ありがとう、君は本当に優しいね。

 アミィ。ボクは今日、君に出会えて本当に幸運だと思う。
 今日の事は何があっても忘れない……ずっと、ボクの心の中で大切な思い出として守り続けてみせるよ。絶対にね。


 ──こうして。ボクは……長い長い生のひとときを彩ってくれるような、そんな少女と出会ったのであった。