「……つまり、魔王なんて危険な存在がこの世界にいるかもしれないって事?」
「魔界から姿を消したならば、行ける場所はこの世界か精霊界か妖精界だろう。だが魔王が精霊界と妖精界に行くとは考えにくいし、可能性が最も高いのはやはりこの世界だろうな。この記事もその可能性を示唆しているようだ」

 記事の一部分を指さしながら、マクベスタが話す。そこを見ると確かに似たような事が書かれていて、魔王がいそうな場所の候補がいくつか挙げられていた。
 やはり可能性が高いのは魔界に繋がる扉のある巨大な山脈、白の山脈に接する国々らしい。
 魔界はこの世界の裏側にあると言われており、その魔界とは白の山脈の中にある魔界の扉で繋がっている。
 ……そもそも、白の山脈と言うのはこの世界で言う所の神々の住まいなのだ。こんなの伝承やら神話内での話……と言いたい所なのだが、白の山脈に神々が住むと言うのは困った事に事実なのだ。
 アンディザのヒロイン、ミシェル・ローゼラは生まれてすぐに両親によって白の山脈の麓に捨てられる。
 その時偶然ミシェルちゃんを見つけた神々が、なんかめっちゃ可愛い子供いるじゃーん! みたいな軽いノリで神々の加護(セフィロス)を授けた結果、ミシェルちゃんには天の加護属性(ギフト)が与えられたのだ。
 そして、その白の山脈からいつも魔物が現れては世界中にその猛威を振るっているのだが……中でもその被害を受けているのが、白の山脈と接している九つの国々と都市と土地なのである。

 まずは我がフォーロイト帝国、西側諸国で一二を争う領土の大国であり、その分白の山脈と接している範囲も広い。
 二つ目はフォーロイト帝国より東側に位置する隣国ハミルディーヒ王国、一作目の主な舞台だ。
 三つ目はフォーロイト帝国のほぼ隣にある魔導国家クサキヌア、かつて賢者と呼ばれた偉大なる魔導師が作った国らしい。
 四つ目はその魔導国家クサキヌアの南方に位置する小国リベロリア王国、いつの間にか滅んでそうな国ランキング第一位だ。
 五つ目は西方諸国の中でフォーロイト帝国と争える程の領土を持つ獣人の国タランテシア帝国、その文化は西洋ファンタジーなこの世界観とは違い中華系の
文化らしい。
 六つ目は国教会の本拠地にして聖地の巨大なる白亜の神殿都市・ディアカノン、人類最強の聖人の住む大神殿もここにある。
 七つ目は……かつて国だった場所。突如生物が生存出来なくなり不毛の地となってしまった、呪われた大地と呼ばれる場所。
 八つ目は連邦国家ジスガランドに名を連ねる国ジャリオ、兵力がかなりのものらしい。
 最後に九つ目はハミルディーヒ王国の東側の隣国に位置する国エクセンリブル公国、何でも古き竜が封印されている伝説があるとか。
 以上が、白の山脈の周りをぐるっと一周した際に白の山脈と接している国々だ。
 これだけの国や都市が魔物の存在に手を焼いていると言うのに、その魔物達を束ねる魔王が行方不明ですって? どうするのよ、そんな奴が街にいたら! 危ない所の問題じゃないわよ!!