「あの、スミ……アミレス様。あの人は誰ですか」

 メイシアがじっとマクベスタを見つめながら言う。
 ……これはもしや運命的な出会い? もしかしてメイシアったらマクベスタを意識してるのかしら! 確かにマクベスタは攻略対象らしく整った顔をしているものね!
 どうしよう、こんな所でラブが起きるとは思ってなかったから心の準備が!

「私の剣術友達のマクベスタよ。真面目さが取り柄のオセロマイト王国の第二王子ね。で、マクベスタ! この子は私の初めての女友達のメイシアよ。凄く可愛いでしょう!」

 二人の共通の知り合いたる私が二人の出会いをより劇的なものにしなければ! 意気込んだ私はとても元気よく他己紹介をした。

「……メイシア・シャンパージュです。アミレス様の初めての女友達です」
「……マクベスタ・オセロマイトです。アミレスとは剣の特訓仲間で……以後お見知りおきを、レディ」

 メイシアは真顔でぺこりとお辞儀をし、マクベスタもまた優雅に一礼した。……こう言う所は本当に王子なんだよなぁ、マクベスタのやつ。
 それにしてもよそよそしくないかしらこの二人。もっと仲良くなってもいいのに。

「……二人共私の大好きな友達だから、仲良くしてくれたら嬉しいな」
「大好き……!」
「だいっ、すっき……!? そ、そう言う事を気軽に言うな!」

 二人が仲良くなりますようにと言う意味合いでそう言ったのだが、予想外にもメイシアとマクベスタが『大好き』と言う言葉に反応してしまった。
 メイシアはぱぁああっと顔がみるみるうちに輝いていくし、マクベスタは少し頬を赤くしている。どっちも凄く純粋だなぁ。
 そうやって和やかに時を過ごしていたら、ふとメイシアが何かを思い出したように顔を上げて。

「あっ……そうだ、アミレス様。わたしに、何か手伝える事はありませんか?」
「手伝える事……?」
「アミレス様の事業に、何かわたしが手伝える事はありませんか? わたしも……アミレス様のお力になりたいんです」

 メイシアは真っ直ぐとこちらを見つめて言った。
 メイシアのその申し出も気持ちも有難いのだけど、ただでさえシャンパージュ家には物凄い数の発注をして迷惑をかけるつもりでいるからな……その上でメイシアを巻き込むのはちょっと……。
 そもそも、もし万が一メイシアを貧民街に連れて行く事になったとして、それをあの伯爵が容認するだろうか。
 それ以前にこの子に手伝って貰えるような事あるかしら……ハッ! いるだけで場が和むから現場の士気向上とか……?!
 いや駄目だ、そんな事に伯爵令嬢を巻き込むな。
 じゃあ何してもらうのよ〜! メイシアがこれだけ意気込んでくれているんだしその気持ちには応えたい、でも何も思いつかない……!!
 どうしたらいいんだと頭を抱える私に、思いもよらぬ助け舟が出される。