ガタガタと石畳の上を走る馬車。その中から見える外の景色は新鮮に感じた。……いやまぁ、新鮮も何も街に来たのはこれでまだ二度目なのだけれど。
 久々に髪の毛を桃色に染め、ローブを羽織り、商人が使うような馬車で街中を進む。
 馬車の窓部分から外を眺めて、私はシュヴァルツと共に騒いでいた。

「馬車凄い! 楽しい!」
「たのしーね、おねぇちゃん!」

 何せ二人共馬車は初めてなのである。先程から、二人揃って外を眺めながら暴れ回っている。

「落ち着きなよ、アミィ」
「そう暴れては危ないぞ、二人共」

 そんな私達をマクベスタとシルフが窘める。
 マクベスタはシュヴァルツの首根っこを掴み、窓から引き剥がして着席させた。それにシュヴァルツが不満げに頬を膨らませる。
 ……初対面の時はかなり戸惑っていたようだけど、マクベスタもシュヴァルツとかなり打ち解けたみたい。シュヴァルツが誰相手でも明るいからかしら。
 さて、奴隷商の一件より三日後。私達は今シャンパージュ伯爵邸に向かっている。
 慈善事業の為にシャンパー商会のお力を拝借したいと思ったからだ。昨日その旨を伝える手紙をシャンパージュ伯爵家に送ると、その日のうちにいつでもどうぞと言う返事がすぐに来た。
 なのでそのお言葉に甘え、こうして翌日に訪ねる事となったのだ。
 しかも、超有能なハイラさんのお陰で私は何と自由な外出が可能となったので、先日のように全反射を用いてコソコソ外に出る必要も無くなった。
 ハイラさんが手綱を取る馬車に揺られて普通に出てこれたのだ。何の変哲もない普通の馬車に野蛮王女が乗ってるなどとは誰も考えないだろう。
 これで、外で私の素性が知られる事は無い。ふふふ……これから外で遊び放題ね!

「ぶー、マクベスタの意地悪ぅ! 真面目だけが取り柄ー!」
「……その微妙に傷つく罵倒やめてくれないか」

 マクベスタに向かってぽかぽかと拳をぶつけるシュヴァルツに落とされる、マクベスタの物悲しくなる呟き。
 シュヴァルツは変に語彙力があって偶に辛辣なのよね。基本的には可愛いんだけど。