例え魔力を奪っても、人間もすぐには死なない。死んだ方がマシと思える苦痛を味わう可能性はかなり高いが、自業自得だ。
 ボク達精霊には確かに制約と言う絶対的な縛りがある為、人間界では大した事が出来ないのだが、特例として各精霊の権能の使用が認められている。……まぁ、それでもボクの権能は使えないのだけれど。
 それはともかくだ。その為もしここでルーディが権能を発動させても、例の制約には抵触しないと言う訳だ。

 話が少し逸れてしまうが、この世界の大気中には魔力の元となる魔力原子が充満している。
 人間の体内……正確にはその魂なのだが、そこには大気中より取り込んだ魔力原子を蓄える魔力炉があり、魔力炉にて魔力原子を魔力に変換してようやく魔法が扱えるようになっている。
 実は人間達はあまり知らないようだけど、人間は体内より完全に魔力原子が消滅したら死に至る。
 何せその魔力原子と魔力炉と呼ばれるものが生命活動を維持する機構でもあるからね。産まれてすぐに魔力原子を魔力炉にくべて、魔力と生命力を生産して初めて生命活動が可能になる。
 稀に魔力量(魔力原子の変換効率の善し悪しを人間なりに分かりやすくした指標らしい)が多い者が、産まれたそばから魔力を生産しすぎてしまい、固有の魔力の暴走を起こす事もあるらしい。
 まぁ、こればっかりは精霊に文句を言われても困る。確かに魔力の管理はボク達の仕事だけれど、魔力量に関しては完全に人間達の遺伝の問題だし……どちらかと言えばそれは神々の管轄なので、文句は神々に言って欲しい。

 そうして生産した魔力を扱うものが魔法なのだが、我々で言うところの権能と言うものは魔法では無く、その為魔力も必要としないのだ。
 ボク達の権能は言わば各属性の魔力の原型。権能と言う原型を模して、人間が扱えるレベルにまで簡略・劣化させたものが、所謂魔力や魔法なのだ。
 大昔、神々は面白半分で無力な人間に何か力を与えてみようと思ったらしい。しかし神々の力はどれも人間には過ぎた力でしか無かった。
 その時神々は思いついた。『自分達には出来ないんだし、代わりに力の管理をする為だけの存在を創ればよくね?』と。そうして創られたのが精霊と言う存在だった。
 神々はこの世界に魔力原子というものを生み出し、それを魔力炉を使い魔力に変換する機構を人間と言う存在に組み込んだ。
 後はそのまだ何色にも染まっていない魔力に色をつけるだけ。神々はその着彩作業もやはり面倒くさがり、色を付けてこの先も管理し続ける役目を予定通り精霊に押付けていった。
 しかしその着彩作業がまぁ大変だったと言う。そもそも生まれたばかりのちっぽけな存在に、魔力の色付けなんて作業は不可能だったんだ。
 あまりにも成果を出さない精霊達に痺れを切らしたのか、神々は作り上げた全四十体の精霊達にこう告げた。