だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

「──全隊整列! 敬礼!!」
『はっ!!』

 美しい虹色水晶(オパール)の城。その正門前にて、城を背に立ち声を張るのは宝石の触角を持つ美男子、女王近衛隊隊長ラヴィーロ。
 人間界の最果て(どこか)──……運が良ければ辿り着ける楽園、妖精界。その世界の中心ともいえる場所にて、女王近衛隊と呼ばれる精鋭組織が総動員されていた。

「皆、しかと聞け。ついに時が来た。これより私達は……我等が女王陛下に捧ぐ、最も芳醇にて最も甘美なる、極上の饗宴を作り上げる」

 顔色一つ変えず、しかしその声に熱と勢いを孕ませて、ラヴィーロは兵隊達を鼓舞する。

「これこそが女王近衛隊の役目。我等が女王の望むままに動くことこそが我等が本懐! 同胞達よ、死の覚悟は出来たか。女王近衛隊が隊長ラヴィーロの名において、ここに宣言する」

 ゴクリと誰かが生唾を呑み込む。

「……──私はとうに、女王陛下の為に死ぬ覚悟はできている。なればこそ──我が命を以て、必ずや饗宴を実現させよう!」
『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 ラヴィーロの言葉に、整列した兵隊達は拳を突き上げ雄叫びをあげた。それは拙い協奏曲だったが、彼等の意思がラヴィーロと同じである事を示すには、充分な音色だったようだ。
 兵隊達の覚悟を認め、ラヴィーロは今日一、声を張る。

「────全軍、侵攻する!」

 それはまさしく、宴の開幕を告げる音頭のようで──……戦いの火蓋を切る、発砲音のようでもあった。


 ♢♢


 街に穢妖精(けがれ)がまたもや現れたと聞き、私達はこれを皮切りに作戦実行へと躍り出た。
 作戦はこうだ。──穢妖精(けがれ)はシルフが呼んだ精霊さん達による精鋭パーティーが対応し、シルフ自ら囮となり妖精達をおびき出す。
 シルフには何やら、妖精達をおびき出す策があるらしいのだ。なので、私達では中々に大変な妖精との戦いは、全て精霊パーティーにお任せすることにした。

 その代わり、私達人間には重大な役目が与えられた。それは至ってシンプルなのだが、至極難しい役目。
 ──攻略対象達から、ミシェルちゃんを奪い去る。
 奇跡力の影響でミシェルちゃんの取り巻きとなったらしい攻略対象(チート)達から、ヒロインである彼女を攫うなんて非常に難しい。実に困難を極める事だろう。
 だがそれでも……この事態を平和的に解決するには彼女を誘拐し、その精神にお邪魔して、彼女自ら『奇跡の撤回』を行ってもらう必要がある。ならば私は、心を鬼にしてこの役目を果たそう。

 なので。ある程度街の安全を確保出来たら、ミシェルちゃん達親善使節が滞在する真珠宮に侵入して、誘拐と洒落こもうとしたのだが。
 その道中。街中で、彼女の姿を見た。
 ……──ミシェルちゃんおるやん!! っと、あんぐりとしながら立ち止まる。先頭を走っていた私が立ち止まった事により、皆も足を止めた。

「え、ターゲットいるじゃん」
「本当だな、あの時の女の子だ。何をしているんだろうか……」
「──ミシェルちゃん、穢妖精(けがれ)を倒しているわよね……?」

 シャル、ユーキ、私とで重なるように、曲がり角で体を隠し、あちらの様子を窺う。
 見たところ──ミシェルちゃんとロイとカイルの三人が、穢妖精(けがれ)を討伐しているようなのだ。いやはやどういう事なのか。聞いていた話と違うんだけど。

「それにしても不可解ね……どうして彼女が穢妖精(けがれ)を倒すのかしら……」
「妖精の計画とやらには不要の存在だから──とは、到底思えないな。だとすればこうも蛆虫のように湧いてくる筈がないし」
「そうなのよねぇ……」

 ユーキと二人でうーん、と唸る。何やら『頓挫』の二文字が視界の端を反復横跳びしつつあるのだが、とりあえず無視しておこう。

「……ふと、思ったんだが」

 シャルがぽつりと零す。

「あの子は──悪い子、じゃない……気がする」

 それは根拠のない勘に過ぎない。だけど、それを言ったのが他ならない(シャルルギル)だからだろうか。私達は顔を見合わせて頷き、その可能性を念頭に置いて、その一説について意見を交わしていった……。