「勿論です。我らが皇帝陛下の御世でそのような悪行を行った罪、最上級の報いを以て償わせますから」

 ケイリオル卿がここまで仰るのですから、罪人達の破滅は決定事項ですね。姫様がこれ以上気を揉む必要が無さそうで良かったです。

「有力な証拠の提供、感謝します。謝礼は何がよろしいでしょうか」

 さて、これにて私が姫様より任された仕事の方は終了したのですが、謝礼ですか。ふむ……ここは一つ、ケイリオル卿にお願いしてみましょうか。

「……姫様の外出許可を頂けますか? 姫様ももう十二歳になられました、そろそろ外の世界を知っても良い頃合いかと」
「王女殿下の外出許可ですか……」

 あの様子ですと、これからも姫様はここを抜け出そうとするでしょう。その度に危険な手段を取られては、私も心臓が持たないでしょう。
 なので、いっその事正式に許可を取ってしまえば良いと思ったのです。
 姫様が剣と魔法を学ばれると仰った際にも、ケイリオル卿から皇帝陛下に話を通して下さいましたし、今回もケイリオル卿が上手く動いて下さると信じ、私はこう願ったのです。

「良いですよ。私が許可を出したという事で、もう普通に外出されても結構です」

 ケイリオル卿はあっさりと許可を出して来ました。
 彼は早速新しい紙を取り出して、そこに外出許可の旨を記載し始めた。私がそれを覗き込んでいると、ケイリオル卿が「あぁ、ですが」と条件を提示して来ました。

「絶対に一人では外出しないよう、王女殿下にお伝え下さい。必ず誰かを伴い、尚且つ、外で王女殿下だと気づかれぬよう変装等もして下さい。それが条件となります」

 そう話しつつ、ケイリオル卿はそれも許可証に記していく。私はそれらに「分かりました」と首を縦に振った。
 それぐらいならば特に問題でもありません。全然可能な範囲です。
 こうしてケイリオル卿との交渉を終えた私は、姫様の外出許可証を片手に早足で皇宮へと戻りました。
 ケイリオル卿直筆の許可証を手に入れたとあれば、姫様は喜んで下さるでしょうか。褒めて下さるでしょうか。……このような烏滸がましい事を考えてしまうなど、私は侍女失格かもしれません。
 侍女で無くなってしまえばどうしましょうか、実家の爵位を継げば姫様のお力になれるでしょうか……。
 いいえ、まだそうと決まった訳ではありません。これは私のただの妄想です。
 なので今は──姫様にこの許可証をお渡しする事だけ、考えましょう。