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「っあ〜〜。疲れたぁ、もう無理耳が痛いよぉ」

 ベッドに倒れ込みながら、私は情けない声をあげた。
 時は昼頃。私はハイラさんとシルフによって数時間に及び行われた説教に身も心もヘトヘトだった。

「……それでは姫様、私は帳簿を渡しに行きますので、くれぐれも……」
「分かってるよ、もう勝手に抜け出したりしないから」
「…………では、行って参ります」

 じとーっと訝しげにこちらを暫く見つめた後、ハイラさんは例の帳簿を持って部屋を後にした。
 奴隷商は潰せたが、その大元は今ものうのうと生きている。だから私は大元たるデイリー・ケビソン子爵を徹底的に叩き潰す為にあの帳簿を持ち帰った。
 そして私は、それをハイラさんからケイリオルさんに渡すように頼んだ。……勿論、帳簿はハイラさんが独自のルートで入手したという事にしてもらって。
 叶うなら私の功績にしたい所なのだが……流石に皇宮から脱走した挙句、単身奴隷商に乗り込むなんて蛮行を世間と皇帝が許す筈もない。
 だから奴隷商解体の件の功績は大人に譲ったのだ。
 ……ちなみに、この事は説教の後に話した。と言うか、朝起きて一番に見た物が怖いくらい綺麗な笑顔のハイラさんだったのだ。
 ハイラさんは机の上に置かれていた帳簿と私の愛剣、そして隣の部屋にいたシュヴァルツを見て、色々と気づいてしまったらしい。
 起きて早々、縄でぐるぐる巻にされたシュヴァルツを傍らに転がすハイラさんに説明を求められ、『あっ、これ説教めちゃくちゃ長くなるやつだ』と察した私は正直に全てを話した。
 勿論ハイラさんは怒った。とても怒ってて怖かった。
 何故相談して下さらなかったのですか? 何故そのように危険な真似をするのですか? 何故、何故……と長時間に及ぶ説教に、途中からシルフも加わってしまい本当に辛かった。
 しかしハイラさん達の言う事全てが正論なので、私はぐうの音も出なかった。今回の事は完全に私に非があると自覚しているので、私は甘んじて説教を受けた。
 途中で朝食兼昼食の休憩を挟んで通算およそ四時間にも及ぶ説教が、先程ようやく終わったのだ。
 ……本当に疲れた。いやマジで。