「外でお祭りをやっているからじゃないかな。隣の城には随分と人がいるみたいだけど……」

 ちゃんとボクの声は届いたようで、彼女はしっかりと反応を見せてくれた。……ただ、ボクが思っていた反応とは違ったけれど。
 これ、どう見ても怖がってるよね。うーん……どうしよう、怖がらせるつもりは無かったんだけどなぁ。

「あー……もしかして怖がらせちゃった? ごめんね、急に声をかけたらそりゃあ驚くよね」

 とりあえず、出来るだけの謝罪をしておいた。
 言われてみれば……確かに、突然声をかけられたら姿の有無に関わらず誰だって驚いてしまう。
 これはボクの失敗だなぁ、怖がらせちゃって申し訳ないや。
 なんていう風に、シュンとしていると。

「どちら様……ですか?」

 彼女が(ボク)の方を見て、尋ねてきた。
 驚いたよ。さっきはあんなに怖がっていたのに、もう平気なんだ。
 それも……相手の正体を真っ先に確かめようとするなんて。本当に変わった子だなぁ。

「ボクかい? ボクは──精霊だよ」

 別に隠す事でも無いしなぁ、と思い普通に答える。
 すると彼女の体がピクリと反応した。これは……精霊を信じてないパターンかな。
 まぁ、それでも構わない。この子と仲良くなって、改めて精霊だと説明をすればいいだけの事だ。
 なーんてボクが意気込んでいると、彼女は突然手元の紙に一心不乱に何かを書き込み始めた。

 ……ボクの事を忘れちゃったのかな。むぅ、何だかとても気に食わないね。

 相変わらずなんて書いてあるのかは読めないし、この子はとっても集中しているし。
 ボクは彼女の顔のすぐ側まで光を移動させ、話しかけた。

「君、名前はなんていうの?」