ボスとやらの方は聞きたい事があったのでわざと外したが、最後の男に関しては足を刺して来たので仕返しにしっかりと足を撃ち抜いた。両脚の太ももを。
 地面でのたうち回る男達は一旦置いておいて、私は焼かれた大男の喉元に少し触れる。僅かだが、脈動していた。
 皮膚は至る所が焼け爛れ悲惨なものとなっているが、どうやらこの男、あの炎の中を生き延びたらしい。
 メイシアの方を見て、私は「生きてるよ」と告げる。するとメイシアは安心したように肩をなでおろしていた。
 そして、どうやら最後の男以外の奴等もあの火に巻き込まれたりしていたようで……もう戦意は無いらしい。
 それでも信用ならないので、念の為にとボスとやら以外の顔の周りに水の塊を出して一瞬だけ溺れさせ、気絶させた。
 勿論生きてますよ? 確かに倫理観皆無の手法を取ってるけど、殺すつもりは無いので……。
 一人取り残されたボスとやらを見下ろして、私は剣を抜いて再三尋ねる。

「さてそれじゃあ仕切り直して……全部吐いてもらうわよ!」

 ボスとやらは正直に全てを話した。部屋の本棚の裏にある隠し金庫の所在と暗証番号を教えられ、私はそれを開けようとする。
 ここには大した記録は残っておらず、あるのは子爵との契約書と数ヶ月前に新しくなったばかりの人身売買の帳簿、そして人身売買とは無関係な商売の帳簿だけだった。
 しかしそれだけで証拠としては十分だった。その内容を確認すると、そこにはしっかりと人身売買に関わった者達の名と買った子供の金額が記されており、売人の欄にはデイリー・ケビソン子爵の名前も書かれていた。
 こんな都合のいい証拠が手に入るなんて思いもしなかったわ……めちゃくちゃラッキーね。と思いながら、くるりと振り返り、また溺れさせて気絶させようとする。

「じゃあ、貴方はもう用済みね」
「は?! 大人しく話せば助けてくれるって話だったろうが!!」
「命『は』助けてあげるとは言ったわよ。貴方の人生まで助けてあげるなんて一言も言ってない」
「ンだとこのガキィッ!!!!」

 激昂してこちらに殴りかかってくるボスとやらを普通に返り討ちにして、今度こそ気絶させようとしたその時。メイシアが別の帳簿をペラペラと捲りながら発言した。

「この帳簿、おかしいよ」
「おかしいって?」

 くるりと振り向いて私がそう聞き返すと、メイシアはこちらに来て、帳簿のとある部分を指さしながら話す。