ディオさん達が出ていってからしばらくの間、私は一旦子供達に檻の中に戻って貰った。ディオさん達が来るまでに、もし万が一奴隷商がやって来たら、檻の外にいる子供達を見て暴行に出たり警戒を強めてしまうかもしれないからだ。
 しかし檻の鍵はかけていないので、出ようと思えばいつでも出られるようになっている。ディオさん達が迎えに来てくれたら、奥の方の檻の子供達から順番に地下を出る予定だ。
 私のいた檻は最奥にあったものなのだが、私はとりあえず最後尾を行く予定である。その方が別行動に移りやすいからだ。
 例の煙幕玉はシュヴァルツとメイシアとユリエアとナナラに一つずつ渡した。もしもの時はこれを使ってと簡単な使い方も教えておいた。
 ここでは時間を確認する術がないので、とにかく私は、ディオさん達が日付が変わった後に来てくれるのを待っていた。
 そしてついにその時がやって来た……。

「──ガキ共、行くぞ」

 無愛想な声が聞こえて来たので檻の扉を開けて顔を出すと、地下の入口にディオさんとその仲間と思しき人影が見える。
 私はすかさず檻から出て、手筈通り奥の方の檻の子供達から順番に外に出るよう呼びかけた。
 子供達は、ディオさん達の案内のもと、徐々に地上へと上がっていく。総勢三十名程の子供達が全員檻から出て、地下からは私以外の子供がいなくなった。

「…………私も行かなきゃ」

 静かな地下空間に、私の呟きは静かに響いた。
 力強く長剣《ロングソード》を握り締めて、全反射を行い私も地下から出る。……流石に魔力の消費が激しいわね、戦わざるを得ない場面に陥った時の事も考えて、全反射を使うのはこれで最後にしましょう。
 階段を駆け上がり、地上の建物に出ると、早々に奴隷商の男達とすれ違った。慌てて避けた為気づかれなかったが、三名の男が地下へと向かったらしい。
 そして、六名の男が子供達が逃げた筈の方向へと慌ただしく駆けていった。その後を追うように更に何人もの男が声を荒らげて走ってゆく。
 ……不味いわね、思っていたよりも気づかれるのが早いわ。ディオさん達に任せっきりで本当にいいのかしら、私も援護に──……いや、駄目だ。
 子供達の事はディオさん達に任せると決めた。それに私には目的がある。今後このような事が繰り返されないよう、奴隷商を徹底的に潰さねばならない。
 だからあちらに気を割いている暇は無い。彼等を信じて、私は私の成すべき事をしなければ!

「どうなってやがる!? どうして地下の商品共が脱走しやがったんだ?! そもそもどうやって鍵を開けたんだ!」