手を伸ばせば、瑠璃色の月

寝たふりをしようと決め込んでいたのに、もう恐怖で目も閉じられない。


ブルブルと震えたままの私の身体に巻き付く毛布を一瞬にして剥ぎ取った父は、

「おい、起きろ!自分が何したかその目で確かめてみろ!」

横向きで目を見開いたままの私を仰向けにさせると、勢いよく身体を揺すってきた。


「んっ…!」

「父親が帰ってきたのに寝るとは何事だ!それに、窓を開けっ放しにするなと何度も言っただろう!」


ああ、まるでジェットコースターに乗っているみたいだ。

頭がぐらぐらして、早くも天と地の区別が付かない。

堪らずに父の腕を掴んだけれど、彼は力を緩めるという事を知らなくて。

それよりも、私がそいつの腕に触れてしまったことに対する嫌悪感と拒絶感を抱く方が先だった。


貴方は、そうやって自分の中の正義を押しつけようとして、子供から不評を買っている事すら知らないんでしょう。

いつも理不尽な事で怒鳴り散らかして、私がどれだけ耳を塞ぎたいと思っている事か。


頭の中では沢山の悪口が首をもたげるけれど、

「やだ、ごめんなさい、ごめんなさいっ…!」

私の口を継いで出たのは、謝罪の言葉の山だった。


父に逆らうと、その何倍にも膨れ上がった火の玉が返ってくるだけ。

酒に酔ったそいつの汚い口から唾と共に紡がれる罵詈雑言は、ただ涙を飲んで受け止める事しか出来ない。